賢い人の分散投資−2.7

  

7. 無差別分散投資向きポートフォリオ

上記のETFを組み合わせて、簡単に無差別分散投資ができる。たとえば、次の2つのETF50%ずつ取得することで世界的な分散投資が可能となる。外国債券については、米国債券が除かれているというかたよりが見られるが、それ以外の点では、国際的にバランスのとれた資産配分となっている。

(1)   i シェアーズ MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス・ファンド(ACWI)」(各国株式のおおよそのシェア、米国41%、日本9%、英国8%、カナダ5%などで、新興国を含む)など『MSCI 全世界指数』に連動するETF     - - - - - - - - - - - - - - 50

50%の内訳としては、日本株が約5%、外国株が約45%)

(2)   i シェアーズ・ S&Pシティグループ世界国債(除く米国)・ファンド(IGOV)」(注)(各国国債のおおよそのシェア、日本24%、イタリア9%、ドイツ8%、フランス7%など)などS&Pシティグループ・インターナショナル・トレジャリー・ボンド・インデックス(除く米国)』に連動するETF          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 50

50%の内訳としては、日本債券が約12%、外国債券が約38%)

  ちなみに、この方法を使って、日本から円で分散投資をした場合の運用成績を調べてみると、年平均の運用利回りは 9.7% である。 (米ドルで投資した場合は年16.0%、いずれも運用益を現金で受け取り、再投資しない場合の利回りで、信託報酬控除後、売買手数料控除前、税引前のもの) 両ETFとも運用を開始してから日が浅く、2年間の実績に過ぎないが、この間、2008年12月末の $1=90.28円から 2010年12月末の $1=81.51円へと円高が進んでいた逆風の中での実績である。 今後、円安傾向が生じれば、年平均利回りがさらに高まる可能性もある。(注)

  

より多くのETFを組み合わせれば、それぞれの人の好きな配分比率で、無差別分散投資をすることが可能になる。たとえば、日本株30%、外国株40%、日本債券5%、外国債券25%というポートフォリオ(資産の種類別組合せ)を作りたいという場合であれば、次のようなETFを組み合わればよい。よほど複雑な組合せを考えない限り、4個か5個のETFを組み合わせれば十分であるはずだ。

(1)TOPIX連動型上場投資信託」、「上場インデックスファンドTOPIX」、「ダイワ上場投信−トピックス」など『東証株価指数(TOPIX)』に連動するETF  - - - - - - - - 26

(2)i シェアーズ MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス・ファンド(ACWI)」(各国株式のおおよそのシェア、米国41%、日本9%、英国8%、カナダ5%などで、新興国を含む)など『MSCI 全世界指数』に連動するETF    - - - - - - - - - - - - - - - - - - 44

      44%の内訳としては、日本株が約4%、外国株が約40%)

(3)i シェアーズ・ S&Pシティグループ世界国債(除く米国)・ファンド(IGOV)」(注)(各国国債のおおよそのシェア、日本24%、イタリア9%、ドイツ8%、フランス7%など)などS&Pシティグループ・インターナショナル・トレジャリー・ボンド・インデックス(除く米国)』に連動するETF           - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 20

      20%の内訳としては、日本債券が約5%、米国債を除く外国債券が約15%)

(4)『バークレイズ 米国 TIPS インデックス』(米国インフレ連動国債関連指数)に連動する「i シェアーズ・バークレイズ 米国 TIPS ファンド(TIP)」などといった、米国の国債関連指数に連動するETF          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 10

  前例と同様に、この方法を使って、日本から円で分散投資をした場合の運用成績を調べてみると、年平均(同前)の運用利回りは 9.5% である。 前例と同様に、2年間の実績に過ぎないが、この文章を読んでいる方々の中で、同じ期間、他の方法で分散投資をしていて、9〜10%を下回る運用成績となってしまった方は、現在の運用方法を見直した方がよいだろう。無差別分散投資の利回りというのは投資家の利回りの平均値にすぎないので、それを下回ってしまったということは損をしているのだということを認識して、まず、このような正しい無差別分散投資に切り替えるよう、お勧めしたい。

  

組合せに際して、注意したいのは、既にふれたとおり、全世界を対象とした指数でも、本当に世界全域を対象としたものと、日本を除く世界の指数とか、米国を除く世界の指数といった、一部の国を除くものとがあるという点である。この結果、除かれる国があるETFを選んだ場合には、その欠ける分だけ、他のETFで補う必要があり、逆に、他のETFと二重に含まれる場合には、それらの合計が過大にならないように気をつける必要がある。これらを考慮した上で、最終的な国別シェアが、できるだけ目標に近いものとなるように調整することになる。

上記のような組合せよりも、日本の債券の割合をもう少し増やしたいと考える場合には、日本の債券だけを対象としたETFが現時点では見当たらないことから、後述のように、次善の策として、日本の債券を対象としたインデックス・ファンドを利用することとなる。インデックス・ファンドで、「***・日本債券インデックス・ファンド」、「***・国内債券・インデックス・ファンド」などといった名称のものが多数あり、この種のものが該当する。ただし、それらの信託報酬は0.5%前後と、ETFの場合よりも、やや高めであるという欠点があるが、日本の債券比率を高めたい場合には、致し方ない。

また、海外の債券部分について、上記 (3)(4)とも、各国の国債だけを対象としたETFである。国債だけではなく投資適格社債を組み込んで、もう少し利回りを高めたいという場合には、『iBoxx 米ドル建て リキッド投資適格 インデックス』に連動する「i シェアーズ iBoxx 米ドル建て 投資適格社債 ファンド(LQD)」などを組み合わせて利用することができる。

さらに、様々な商品も加えたいということであれば、表に掲載されている「イージー ETF S&P GSCI 商品指数 キャップド・コモディティ 35/20 クラスA 米ドル建 受益証券」、あるいはi シェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト」などの、商品対象型ETFを加えることもできる。

  

(注)「i シェアーズ・ S&Pシティグループ世界国債(除く米国)・ファンド(IGOV)」は『S&Pシティグループ・インターナショナル・トレジャリー・ボンド・インデックス(除く米国)』に連動するETF。外国債券型ETFで純資産総額の大きなものは、米国国債に連動するものが多く、この世界債券に連動するETFは純資産総額 175百万ドル(約144億円)と、海外上場のETFとしてはやや小振りであることから、表には掲載されていない。年間経費0.35%。最低購入代金 約8万円。

      このインデックスは、米S&P社が算出し、米国を除く先進国21ヵ国の債券を対象としている。201012月現在の国別構成比は、日本23.51%、イタリア9.38%、ドイツ7.75%、フランス7.28%、カナダ4.92%、ベルギー4.84%、スペイン4.83%、ギリシャ4.80%、イギリス4.63%、オーストラリア4.60%、その他23.56%(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、ギリシャ、アイルランド、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン、スイス)。国債発行額の多い国の比率が高くなる傾向が見られる。

(後日注) 本稿執筆から3年経過した時点で、本稿の内容が妥当であったかどうか確認する目的で、2008年12月末から2013年12月末までの5年間の実績を調べてみた。 (1)の ACWI に米ドルで投資をした人の年平均利回りは 19.0%であったのに対して、この間途中で円安に流れが変わったことから、日本円で投資をした人の年平均利回りはさらに高く 25.0%であった。 また (2)の IGOV に米ドルで投資した人の年平均利回りは 3.7%で、日本円で投資をした人の年平均利回りは 7.1%であった。この結果、ACWI 50%、IGOV 50%で投資をした時の運用利回りは、米ドルの場合で 11.4%、日本円の場合で 16.1%であった。 このように、リーマンショックによる落ち込みの後の世界的な市況回復期を反映した高めの利回りとなっている。

     ACWI は世界の株式市場の全株式の加重平均にあたるものなので、上記の25%という数字の意味は、よい先にも悪い先にも世界中の株式にまんべんなく何も考えずに投資をした場合の運用利回りが年25%であったということである。 つまり、運用の上手な人も下手な人も含めて、様々な国の株式投資信託で運用していた人たちの最近5年間の利回りの平均が年25%であったはず、5年間では運用資産を2.25倍に増やしたはずということになる。 およそ半数のあまり上手ではない人はこれを下回ったかもしれないが、残りのおよそ半数の人はこれを上回ったはずということになる。 なお、この25%という利回りは、分配金を再投資しない場合の算術平均利回りであるが、分配金を再投資するトータルリターン方式による5年間の幾何平均利回りでは年18.0% になる。

     日本で購入されている投資信託は、日本株を対象としたものだけではなく外国株を対象としたものが多い。つまり、多くの日本人が投資信託を通じて国際分散投資をしていることになる。よい成績が期待できそうな投資信託を選んだつもりで運用していた日本の投資家で、この水準を上回った実績をあげた人が一体何%いるのであろうか。 この銘柄選択に最も頭を使わない方法による成績を大きく下回ってしまったという人は、これまでの運用方法に何らかの欠陥があったと認識すべきであり、せめて平均並みとなるように、今すぐにも運用方法を改めた方がよさそうだ。

     なぜ平均利回りが低くなるのかというと、同じように無差別な国際分散投資をしていたとしても、リスクが高めでリターンが低めな先、つまり将来性の低い先に対する投資割合が高すぎることが一番の原因であろう。そのような将来性の低い先に対する投資割合が高ければ高いほど低めとなる。また、運用成績に比べて高めな手数料を払い過ぎている場合にも平均利回りは低めとなる。

     この ACWI と IGOV の運用成績は、日本で多数販売されている投資信託の実績評価にも使えるように思われる。 ある投資信託が国内外の株式で運用されている場合には、ACWI の成績と比較して、どの程度優れていたのか、あるいは劣っていたのかという比較をしてみる。 また別の投資信託が国内外の債券で運用されている場合には、IGOV の成績と比較してみる。 過去の実績は将来を約束するものではないとしても、5年間にわたる平均値との比較は、私たちが運用方法の問題点を反省する際の材料を提供してくれて、今後の運用成績向上に役立つと思われる。

     日本で販売されているETFを除く投資信託で、外国の株式を含めて分散投資をするものは約1,000件あるが、その中で最近5年間のトータルリターン方式平均利回りが18%に達するものを検索してみるとわすか13件しかヒットしない。(最高のものでも20.0%にとどまる) さらにその中には総資産50億円未満の小さすぎると思われるものが半数を占めており、50億円以上のものはさらに少なく6件のみとなる。 つまり、一般的な投資信託で5年間運用した場合、最も頭を使わない分散投資である ACWI の運用成績を上回ることは極めて難しいことを示している。

     個人投資家の運用について述べてきたが、このような資産運用の考え方は機関投資家の運用成績向上にも役立つだろう。 国の年金資金の運用利回りの改善が叫ばれているが、このような無差別分散投資のレベルにまで引き上げるだけでも、年金財政収支が大幅に改善するので、年金支給額を年々減らし続けるのではなく、逆に年々増やし続けることができるようになるはずだ。

  
   
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