賢い人の分散投資−2.7

  

7. 無差別分散投資向きポートフォリオ

上記のETFを組み合わせて、簡単に無差別分散投資ができる。たとえば、次の2つのETF50%ずつ取得することで世界的な分散投資が可能となる。日本の債券が除かれているという点でかたよりが見られるが、それ以外の点では、国際的にバランスのとれた資産配分となっている。

(1)   i シェアーズ MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス・ファンド(ACWI)」(各国株式のおおよそのシェア、米国60%、日本5%、中国4%、フランス3%、カナダ3%他で、新興国を含む)などの『MSCI 全世界指数』に連動するETF     - - - - - - - - - - - 50

50%の内訳としては、日本株が約3%、外国株が約47%)

(2)   NEXT FUNDS 外国債券 FTSE 世界国債インデックス(除く日本)連動型上場投信(各国国債のおおよそのシェア、米国52%、イタリア8%、フランス8%、スペイン6%、ドイツ5%他)などの『世界国債インデックス(除く日本)』に連動するETF  - - - - - - - - - 50

50%の内訳としては、日本債券が0%、外国債券が50%)

  ちなみに、この方法を使って、2018年から2022年までの5年間、日本から円で分散投資をした場合の運用成績を調べてみると、年平均の運用利回りは 4.9% である。 (ちなみに(1)のみの円利回りは年8.7%であるのに対して、米ドルでの利回りは年5.3%だったので、円安の影響で円利回りが上乗せされたことがわかる。)

  

より多くのETFを組み合わせれば、それぞれの人の好きな配分比率で、無差別分散投資をすることができる。たとえば、日本株30%、外国株40%、日本債券5%、外国債券25%というポートフォリオ(資産の種類別組合せ)を作りたいという場合であれば、次のようなETFを組み合わればよい。よほど複雑な組合せを考えない限り、4個か5個のETFを組み合わせれば十分であるはずだ。

(1)TOPIX連動型上場投資信託」、「上場インデックスファンドTOPIX」、「ダイワ上場投信−トピックス」など『東証株価指数(TOPIX)』に連動するETF  - - - - - - - - 28

(2)i シェアーズ MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス・ファンド(ACWI)」(各国株式のおおよそのシェア、米国60%、日本5%、中国4%、フランス3%、カナダ3%他で、新興国を含む)など『MSCI 全世界指数』に連動するETF    - - - - - - - - - - - - - - 42

      42%の内訳としては、日本株が約2%、外国株が約40%)

(3)NEXT FUNDS 外国債券 FTSE 世界国債インデックス(除く日本)連動型上場投信(各国国債のおおよそのシェア、米国52%、イタリア8%、フランス8%、スペイン6%、ドイツ5%他)などの『世界国債インデックス(除く日本)』に連動するETF   - - - - - - - - 25

      25%の内訳としては、日本債券が0%、外国債券が25%)

(4)『FTSE日本国債インデックス』に連動する「i シェアーズ コア日本国債ETF」などといった、日本の国債関連指数に連動するETF  - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 5

  前例と同様に、この方法を使って、日本から円で分散投資をした場合の運用成績を調べてみると、年平均(同前)の運用利回りは、前例と同様、5年間の推計で約4.7% である(一部5年間の実績がない部分は指数の成績で計算した)。

  上記の2個のETFの場合も、4個のETFの場合も、5年間の実績では5%弱の成績となった。この文章を読んでいる方々の中で、同じ期間、同様な比率で、一般の投資信託などで分散投資をして、4%を下回る運用成績となってしまった方は、現在の運用方法を見直した方がよいだろう。無差別分散投資の利回りを下回ったということは、誰でもできる分散投資の利回りを下回ってしまったということなので、まず、このような正しい無差別分散投資に切り替えるよう、お勧めしたい。

  

組合せに際して、注意したいのは、既にふれたとおり、全世界を対象とした指数でも、本当に世界全域を対象としたものと、日本を除く世界の指数とか、米国を除く世界の指数といった、一部の国を除くものとがあるという点である。この結果、除かれる国があるETFを選んだ場合には、その欠ける分だけ、他のETFで補う必要があり、逆に、他のETFと二重に含まれる場合には、それらの合計が過大にならないように気をつける必要がある。これらを考慮した上で、最終的な国別シェアが、できるだけ目標に近いものとなるように調整することになる。

また、海外の債券部分について、上記 (3)(4)とも、各国の国債だけを対象としたETFである。国債だけではなく投資適格社債を組み込んで、もう少し利回りを高めたいという場合には、『iBoxx 米ドル建て リキッド投資適格 インデックス』に連動する「i シェアーズ iBoxx 米ドル建て 投資適格社債 ファンド(LQD)」などを組み合わせて利用することができる。

  

(注) なぜ平均利回りが低くなるのかというと、同じように無差別な国際分散投資をしていたとしても、リスクが高めでリターンが低めな先、つまり将来性の低い先に対する投資割合が高すぎることが一番の原因であろう。そのような将来性の低い先に対する投資割合が高ければ高いほど低めとなる。また、運用成績に比べて高めな手数料を払い過ぎている場合にも平均利回りは低めとなる。

     個人投資家の運用についてのみならず、このような資産運用の考え方は機関投資家の運用成績向上にも役立つだろう。 国の年金資金の運用利回りの改善が叫ばれているが、このような無差別分散投資のレベルにまで引き上げるだけでも、年金財政収支が大幅に改善するので、年金支給額を年々減らし続けるのではなく、逆に年々増やし続けることができるようになるはずだ。

  
   
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