賢い人の分散投資−2.9

  

9. インデックスファンド

ETFの他に、インデックスファンドという選択肢を予備的に加えた方がよい場合がある。実は、ETFにはいくつかの弱点があり、すべての投資家に向いているとは限らない。

まず、最低購入代金の問題がある。ETFの場合には5千円とか1万円から購入可能なものも一部あるが、5万円とか10万円とやや大きめなものが中心で、中には10万円を超えるものもある。これは、ほとんどの日本の証券会社が、海外のETF購入時の最低口数を1口ではなく、10口などと多めに定めていることによるものである。このように、最低購入代金の大きめなETFについては、小口の投資をすることができない。これに対して、インデックスファンドなら、最低取引単位は1万円程度と小さく、少額からの取引が可能だ。したがって、このような少額の投資をしたい人、あるいは積立方式で少しずつ投資をしたい人は、ETFではなくインデックスファンドを選ばざるを得なくなる可能性がある。

次に手数料の問題がある。ETFの場合には、一般の投資信託のような販売手数料を払う必要がないが、そのかわり、証券会社に株式と同様な売買手数料(委託手数料)を払う必要がある。大手証券会社の窓口でETFを購入する場合には、一般に、1%前後の売買手数料を払うこととなる。この手数料は、5万円、10万円といった小口の取引の場合には1%よりもかなり高くなり、500万円、1,000万円と金額が大きくなると1%を下回って、やや負担が軽くなる。

この売買手数料は取得時と売却時のみ、2回だけの手数料なので、運用期間が十分に長ければ、負担があまり感じられなくなる。たとえば、10年間保有して手放したと仮定すると、10年間で1%程度の売買手数料を2回払うので、1年あたりの負担額は0.2%となり、この手数料の負担感は少なくなる。しかし、運用期間が短く、たとえば2年の場合には、1年あたりの負担は1%となり、その負担が重く感じられる。

実は、この売買手数料の大きさが、米国でも、数十年前まではETFの大きな弱点とされていた。その結果、かつては、ETFよりもインデックスファンドの方が、購入・売却時の手数料負担が少なく、好まれる傾向があった。しかし、証券会社間の競争激化に伴って、売買手数料の水準が下落したことから、もはや弱点とは言えなくなってきた。

さらに、この売買手数料を劇的に軽減させることも可能である。一般の証券会社の店頭窓口を避けて、店舗を持たない証券会社、いわゆるインターネット証券(ネット証券)などで、電話やインターネットによる売買をすることである。証券会社の立場から考えても、電話だけで顧客に対応する場合には、都会の一等地に店舗をいくつも構える必要がなく、地価の安い立地に電話オペレーター専用のオフィスを設けるだけでよい。その結果、顧客に払ってもらう手数料を安くすることができるのだ。さらに、インターネット取引となると、必要なのは基本的にコンピュータだけとなり、人件費を大幅に節約できるので、手数料を一層安めにすることができる。

投資家が手数料を安く抑えるためには、ネット証券でインターネット取引をする方法が最も望ましいのだが、投資家の中には、インターネットの操作だけで、高額の金融商品の売買を行なうことに不安を感じる人も少なくない。その場合には、インターネット取引に次いで手数料の安い電話取引が望ましい。(ネット証券によっては、国内ETFの電話注文は可能でも、海外ETFの電話注文ができないところもある) ともかく、店舗での取引は、手数料が最も高く、資産運用の成績をよくするという観点からは、最も避けたい取引方法である。

このようなネット証券で国内ETFを取得する場合には、投資金額にもよるが、数百円とか千円台などといった少額の売買手数料で済むことが多い。投資額が100万円に対して1,000円であれば、0.1%という水準であり、手数料の負担感がほとんど感じられない。海外ETFの場合には、これよりは、やや高めとなるが、それでも2,000円とか3,000円といったケースが多く、負担感は少ない。さらに、ネット証券の中には、大手証券以上にETFに積極的に取り組んでいるところがあり、ホームページ上で様々な情報提供に努めるとともに、一部のETFについては、売買手数料を無料にするというケースも出始めている。

一方、インデックスファンドの場合は、株式と同様な売買手数料ではなく、通常の投資信託と同じように、個々の投資信託毎に決められた販売手数料を払うことになる。まず、一般の投資信託の販売手数料はというと、それぞれの投資信託により、また販売会社により様々だが、平均的な株式投資信託で2%強、公社債投資信託の場合で(中には手数料のかからないものもあるが)1%前後といったイメージであろうか。これに対して、インデックスファンドの場合には、かなり安めとなり、1%未満のものがほとんどで、最近では無料のものも多くなっている。

つまり、ETFとインデックスファンドの取得時の手数料負担の優劣は、ETFの売買手数料が証券会社によって異なるため、一概には言えない。大手証券でETFを買う場合は、手数料が高めなので、インデックスファンドよりも不利となる可能性がやや高いが、ネット証券で買う場合には大差なく、有利不利はあまり問題とならない。

  

ところで、長期間保有する場合には、購入時や売却時の手数料の高いか低いかをあまり重視する必要がない。それよりも、保有期間中、継続的に払わなければならない信託報酬等の方がはるかに重要となる。

投資信託に10年間投資をした場合の通算の手数料水準を概算したものが次の表である。

 

国内の投資信託の通算手数料のイメージ(インターネット証券の場合)

  購入時
手数料
保有期間中 売却時
手数料
合計
信託報酬 × 年数
国内ETF
100
万円
500万円
0.1% 0.2% × 10 0.1% 2.2%
(0.06〜0.4)
(0.02〜0.16)
(0.1〜0.3)   (0.06〜0.4)
(0.02〜0.16)
(1〜4%)
同インデックスファンド 0% 0.6% × 10 0% 6.0%
(0〜1) (0.5〜0.8)   通常無料 (5〜9%)
一般投信 平均2.1% 平均1.3% × 10 0% 15%

  

海外の投資信託の通算手数料のイメージ(インターネット証券の場合)

   購入時
手数料
保有期間中 売却時
手数料
合計
信託報酬 × 年数
海外ETF
100万円
500万円
0.2% 0.2% × 10 0.2% 2.4%
(0.21〜0.26)
(0.04〜0.05)
(0.1〜0.3)     (0.21〜0.26)
(0.04〜0.05)
(1〜4%)
同インデックスファンド 0% 0.6% × 10 0% 6.0%
(0〜1) (0.5〜0.8)   通常無料 (5〜9%)
一般投信 平均2.4% 平均1.6% × 10 0% 18%

  

一般の株式投資信託の場合、信託報酬の水準は年12%と高めだが、インデックスファンドの場合は、年0.5%とか0.8%などと、通常1%を下回る水準である。ところが、ETFの場合はさらに低く、特殊なものを除いて、年0.1%とか0.3%といった水準で、インデックスファンドを大きく下回る。この結果、上表のように、10年間の通算手数料ではETFがインデックスファンドよりもはるかに優れている。

投資金額が少額の場合や、運用期間が短期の場合といった特殊な場合を除き、ETFを選んだ方がよいということになる。よく、積立方式の場合には、インデックスファンドがよいと言う声を聞く。しかし、それは短期的には正しいかもしれないが、中長期的には正しくない。たとえ、積立方式の場合であったとしても、1年、2年経過して、金額が20万円とか50万円などと、ある程度まとまったら、インデックスファンドからETFに残高を移し替えることが望ましい。(注)

このように、10万円以下の小口資金で分散投資をしたい場合、あるいは短期間の分散投資の場合には、インデックスファンドを選択肢に加える必要があるが、小口や短期ではない通常の分散投資をする場合には、ETFが最善の金融商品である。

  

 (注)ETFは広い意味でのインデックスファンドに含まれるが、ここではETFとETF以外のものを区別するため、ETF以外のインデックスファンドのことをインデックスファンドと呼んでいる
  
(注)ETFのこの他の特徴として、一般の投資信託のように毎回の分配金が払われる時に、自動的に元本に組み込むようにあらかじめ依頼をしておくことはできないという問題がある。元本組込みを希望する人は、ある程度分配金がたまったところで、自分でタイミングを測りつつ、追加で買い増しを行なう必要がある。

  
  
   
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