賢い人の分散投資−1.1

第1章 分散投資の理解

  

1. 分散投資の重要性

昔はわが国でも、投資と言えば、よい先を見つけて投資をすることがコツだと言われていた。ところが近年では、資産運用において、「よい先を見つけて投資をしよう」という声よりも、「分散投資」が大事という声が次第に強くなり、投資信託等を通じて、様々な投資先に投資をするのがよいと言われるようになってきた。

「分散投資」という言葉は、一般に投資先の数を増やすこと、あるいは投資対象の範囲を広げることとして使われており、それが投資リスクを少なくしたり、運用成績を向上させたりする方法として推奨されている。

そもそも、なぜ分散投資が大事なのであろうか。

株式や債券に投資をする場合、1銘柄だけに投資をすれば、たまたま、その株式や債券が運悪く大きく値下がりをして、紙くず同然になることがありうる。一方、複数の先に投資をしていれば、投資先のA社が駄目になっても、BCD社が順調なら、ある程度の損失を被ることは間違いないが、全体としての影響は少なくなる。このように、分散投資をすることによって損失を少なくすることができる。

分散投資をする場合には単に投資先の分散だけではなく、業種の分散も考えた方がよい。つまり分散投資をする先を選ぶ場合に、A社、B社、C社、D社は類似した企業ではない方が望ましい。同じ業種であれば、同時に業績が悪化するということもありうる。たとえば、新しい技術の登場で、昔ながらの技術のABCD各社とも衰退していくかもしれない。あるいは、外国の有力企業E社が日本に進出してきて、日本のABCD の4社とも、経営が悪化するかもしれない。だから、できるだけ異なった業種の4社に分散させて投資をする。

さらに、分散投資では地域分散も考えた方がよいだろう。投資先を選ぶ際に、ABCD、各社は営業地域や工場所在地が同じでない方がよさそうだ。その地域に大地震や大型台風が襲った場合には、各社が同時に長期間にわたって壊滅的な打撃を受ける可能性がある。そこで、生産地域や営業地域の分散も考える。

この他に、時間の分散というものもある。今がよい投資のタイミングがどうかわからない場合に、少額ずつタイミングをずらして売ったり買ったりすることによって、最悪の時期に売買をするというリスクを避けることができる。ちょっと詳しい人は、「ドル・コスト平均法」という言葉を知っていて、毎月一定額に分けて投資をするのがよいなどという。

このような注意を払いながら分散投資をしていれば、大きな損失を被る可能性が減る。つまりリスクが軽減される。リスクはゼロにはならないかもしれないが、少なくともかなり緩和させることができる。

資産運用について解説をする人で、分散投資の重要性を説く人が多いが、このような分散投資の考え方は既に一般の人々にも広く理解されている。たとえ、分散投資という言葉を知らない人でも、1先だけに投資をするということはせずに、複数の先に投資をしている。わが国で一般に推奨されているような「分散投資」は資産運用の初心者を含めて、誰もが多かれ少なかれやっていることであって、「目からうろこ」などといって特に驚くようなことではない。

一般の人の資産運用の相談に乗ることがあるが、その際に、これまでの運用方法を尋ねると、1先のみとか、3先のみという人はもちろんおらず、投資先の数が少なすぎて分散投資が不足していると感じられることはない。さらに、特定の投資先のみに自己資金の40%の投資をするなどと、あまりにも高い割合の投資をしていて、他の投資先への資金配分をもう少し増やさなければ危険だとアドバイスを行なうこともまずない。

近年では、分散投資において、業種分散、地域分散などにとどまらず、国際分散投資についても話題になることが多い。つまり、投資先は日本の企業だけではない方がよいのではないかと考えるわけだ。日本の経済成長率が今後伸び悩むだろうとか、景気が他の国よりも順調に回復しないだろうと予想する人は、欧米の企業に同時に投資をしておくことで、平均の運用成績を改善しようと考える。さらにBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)のような経済成長率の高い新興国に、一部投資をしておけば、平均運用成績がさらに上昇するかもしれない。金融の自由化、国際化が進み、様々な投資信託が販売されるようになったことによって、海外の株式や債券にも簡単に投資をすることができるようになった。このような環境の変化にも助けられて、国際分散投資も積極的に勧められている。

  
   
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