賢い人の分散投資−1.3

3. 市場平均を上回る運用

投資家の中には長期的に市場の平均的な成績を大きく上回る成績を残している人もいる。たとえば、アメリカの有名な株式投資家であるウォーレン・バフェット氏が有名だ。アメリカの雑誌「フォーブス」が毎年発表している世界の富豪ランキングで、しばしばトップの座を占めてきた人物だ。バフェット氏は1950年から2006年までの56年間にわたって、株式投資で、毎年約32%の割合で資産を増やし続けてきたと言われる。現在も投資活動を行っているが、近年は社会貢献活動を積極的に行い、1,000億円単位の多額の寄付を繰り返し行っていることから、3位、4位に甘んじることが多くなった。

ただ、バフェット氏の場合には、過去に他の投資家の資産運用を行って、手数料を得た部分も含まれていることから、純粋な資産運用成績とは言えないかもしれない。そこで、バフェット氏の運営していたファンド(注1)に投資をした投資家の運用成績を調べると、1957年から1996年までの39年間の年平均運用利回りは27%であった。毎年27%の複利で資産が増え続けると、39年間では11000倍になる。10万円の投資が11億円となる。実際、同氏のファンドに最初の頃に投資をしたごく普通の人々の中から、億万長者が続出した。(注2)

同じ期間、一般の株式や投資信託で運用をしていた人が、同じように資産を増やしていたわけではない。この期間の株式市場の平均的はというと、ニューヨーク市場のダウ平均が年約7%の成長率であった。配当利回りを加えても10%程度である。だから、27%という運用成績はアメリカの株式市場の平均を毎年17%、しかも39年間上回り続けたということになる。この実績は、市場平均を上回る成績を、長期間にわたって継続的に出すということが不可能ではないということを示してくれた。

もうひとつの有名な例が、米国で伝説となった「マゼラン・ファンド」(Magellan Fund)である。ピーター・リンチ氏が「マゼラン・ファンド」のファンドマネージャーを務めていた19775月から19905月までの13年間、年平均で、約29%の運用利回りという高い実績を残した。1977年に投資をした人は、この間に投資額が25倍に増加した。(注3)しかし、リンチ氏が退職した1990年以降は、そのような成績は続かなかった。ファンドマネージャーが交替した後も人気だけは衰えず、引き続き新たな投資資金がどんどん集まったが、ファンドの資産規模が大きくなりすぎたことも災いしたのか、その後の運用成績は特にみるべきものがない。リンチ氏もまた、バフェット氏と同様、ごく稀な例外なのであろう。

世の中に多数のファンドがある中で、バフェット氏やリンチ氏のファンドのような成績のよいものは極めて稀である。彼らのように大きく業績の伸びる先ばかりを選んで投資をすることは、誰にでもできることではない。

(注1) ファンドとは、投資家から集めた資金のことで、その運用益は投資家に支払われる。投資信託は投資家を保護するための一定の規則に則ったファンドだが、投資信託以外にも、企業買収ファンドから社員旅行積立金のようなものに至るまで、様々なファンドがある。

(注2) アリス・シュローダー著、伏見威蕃訳「スノーボール」(11) 日本経済新聞社 2009

(注3) ダイアナ・ヘンリーケス著、井手正介訳 「フィデリティ 史上最強の投信王国」日本経済新聞社 1998

  
   
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