賢い人の分散投資−1.4

4. 無差別分散投資

よい先を選んで市場平均を上回る運用をすることは簡単ではなく、特別な人にしかできなさそうなので、よい先を選ぼうという方針を諦めて、単に幅広く投資をするという方法を採用することにしてみる。この方針を「無差別分散投資」と呼ぶことにしたい。よい投資対象を見わける自信のない人は、無差別に幅広く分散した投資を行なうことによって満足感がえられる。無差別分散投資は誰にでもできる。できるだけ幅広い投資機会に、万遍なく投資をすればよい。

分散投資といっても様々な方法が考えられる。控えめな分散投資は、1銘柄のみの株式投資をするのではなく、たとえば5種類の銘柄の株式に同時に投資をすることである。もう少し進んだ分散投資を考える人は、上場されている何百、何千という株式や債券などに、幅広く分散して投資をするだろう。分散投資にあたっては投資信託を利用するのが便利だ。投資信託を持っている人であれば、たとえ1つの投資信託を持っているだけであったとしても、それだけで自動的に何十種類、何百種類という株式や債券に分散投資をしていることになる。しかし、それでもなお満足せずに、10個も15個もの投資信託に投資をしている人もいる。

日本の株式を対象とした投資信託だけではなく、欧米の株式を対象とした投資信託にも、もちろん投資をする。さらに、今はやりの新興国株式の投資信託にも投資をする。BRICsと呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国の4ヵ国はもちろん、ベトナム、インドネシア、南ア、トルコなどなど、できるだけ幅広くカバーした投資信託がよさそうだ。さらに、株式や債券だけではなく金にも投資もする。その他の金属や穀物などの商品にも一部投資をしたい。

このように、闇雲に幅広い分散投資をする方法を採用すると、よい先のみならず、悪い先にも投資をすることになる。言い換えると、将来性のある先のみならず、将来性の乏しい先にも投資をすることを意味する。よい先か悪い先かの吟味をすることなく、ともかく、何にでも分散した投資をするので、無差別分散投資と名付けることとしたのである。

このような無差別分散投資は最善の方法とは言えないかもしれないが、すべての投資家の中で平均的な成績が得られる。あらゆる投資機会の中で、リターン(注)の平均値が得られる。そこで、他の人々が儲けた場合には、自分も少しは儲けたのだと納得できるし、自分が損をした場合も、他の多くの人も同じように損をしているのだと慰めることができる。

(注) リターンとは、投資の収益性、運用利回りのこと。運用期間中に得られる配当や分配金に加えて値上がり益や値下がり損も含めた利益のこと。

  
   
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