賢い人の分散投資−1.7

7. アクティブ型投資信託の不調

株式投資信託は、大きく分けて、アクティブ型投資信託とインデックス型投資信託とに分けられる。このうちアクティブ型投資信託というのは、ファンドマネージャーが、プロとしての腕をふるって、値上がりしそうな銘柄を選び、ベンチマークを上回る運用成績を目指す運用をする投資信託である。ベンチマークというのは、市場の平均的な指標のことで、『東証株価指数』(東京証券取引所第一部全上場銘柄の株価の加重平均指数、別名TOPIX)とか、『日経平均株価』(東京証券取引所第一部の代表的225銘柄の株価の修正平均)といったものが、わが国では代表的なものである。

これに対して、インデックス型投資信託(インデックスファンド)というのは、高望みをせずに、最初から市場平均(ベンチマーク)と同程度の運用成績を目指す投資信託である。この他に、ETF(株価指数連動型上場株式投資信託)というのもある。ETFは、広い意味では、インデックス型投資信託に含まれる商品で、ある市場平均と同じ銘柄構成、同じ銘柄比率で、市場平均のミニチュア版の投資信託を作り、まさに市場平均の成績を忠実に実現しようとする投資信託である。

ETFと一般のインデックス型投資信託とでは、投資信託が証券取引所に上場されているか、上場されていないかという違いがあり、それにともなって、価格の決まり方や売買方法の点でも相違があるので、通常、区別して取り扱われている。ただし、ETFの中には、「***・インデックス・ファンド」といった名前のものもあって、それが通常のインデックスファンドなのか、それともETFなのか、名前を見ただけでは区別がつかないケースもあるので、注意を要する。

  

ところで、アクティブ型と呼ばれる投資信託は、プロが腕をふるって銘柄選びをして、指標を上回る成績を目指すわけだから、運用成績が市場の平均よりも、かなりよさそうなものなのだが、その成績が、その国の株式市場全体の平均を上回るどころか、下回ることの方が多いというのが現実なのである。市場の平均指標を下回るということは、プロがよい銘柄を上手に選べていないということを意味する。つまり、プロがプロの名に値する仕事をしておらず、「ベンチマークを上回る成果を目指す」という当初の約束を果たしていないということなのだ。

この種の運用成績の調査は、わが国ではモーニングスターなどが行って、しばしば発表してくれており、市場平均を下回るものが過半数を占めるということが、繰り返し、繰り返し統計的に証明されている。様々な調査があるが、46敗とか、37敗とか、28敗などといった負け越しの調査結果がいつも発表されている。

しかも、1年とか3年といった期間で、同一市場の平均値を上回る実績をあげたアクティブ型投資信託といえども、継続的に平均を上回るというわけではなく、次の1年間とか3年間には市場平均を下回るケースが多く、結局、期間を長くとればとるほど、市場平均を上回る投資信託が少なくなるという統計も発表されている。

その原因のひとつは手数料が高いことにある。投資信託の運用成績は、投資家が毎年負担する信託報酬などの手数料控除後の金額となる。アクティブ型の投資信託の場合、この信託報酬が1.5%から2%台などと高めである。これはファンドマネージャーに対する報酬や、頻繁に銘柄を入れ替える際の取引コストなどを含むことによるものであって、ある程度、致し方ないのだが、手間をかけて銘柄を入れ替える割合には、運用成績が代わり映えしないことから、手数料控除後の運用成績が見劣りするのである。投資信託を購入したり保有したりする際に払う手数料を控除する前の成績では、市場平均を多少上回っている場合であっても、手数料控除後の投資家の手取りとしての利回りでは市場平均を下回るということになりがちである。観察期間を長くとればとるほど、それは明らかとなる。1年間とか3年間といった短い期間では、平均を上回っているものはもちろん一部あるのだが、期間が長くなり、10年を超えると、平均を上回るものはほとんどなくなる。

どのくらい、市場平均を下回るかという調査結果を調べると、1年あたり13%下回っていると言われる。つまり、「運用のプロ」に任せたコストとして、信託報酬などという名前の手数料を払うことになるが、ちょうどその手数料分くらい、運用成績が平均を下回っていることになる。たとえば、10年間通算で市場平均が35%の運用益を出している時に、信託報酬が1.5%の投資信託の10年間通算運用益が20%程度で、差し引きで、平均を15%下回っている。この15%という差が、10年間で払った信託報酬15%(=1.5%×10年)とほぼ一致しているなどといった具合なのだ。つまり、信託報酬というものがなければ、市場平均並みの成績を残せるのかもしれないが、信託報酬を払ったことによって、成績が市場平均を下回ることになっている。つまり、どうも彼らは手数料に見合った働きをしてくれていないということのようだ。

  
   
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