賢い人の分散投資−1.8E | ||||||||||||||||||||||||||||
(E) 金融専門誌の行なう投資信託の運営能力評価はまちまちで信頼しがたい 米国で最も信頼されていると考えられる3つの金融専門雑誌と1つの金融専門新聞が、投資信託の評価(ファンドマネージャーの運営能力評価)を行っている。その評価表の中から、4つの投資信託(実名を伏せてA、B、C、Dと仮称する)を取り出して、ほぼ同時期の評価を比較してみると、次の表の通り、各誌で評価が見事に相違している。同じ投資信託に対して、極めて高い評価を与えている金融専門誌がある一方で、かなり低い評価を与えている金融専門誌がある。(注) このような専門誌を読んで、投資信託の選別を行おうとする投資家は少なくないと思われるが、複数の雑誌を読み合わせた場合に、どれを信じればよいのか分からなくなるし、そもそも本当に信じてよいのかどうかさえ疑わしくなる。 |
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* 格付けの高さははABCの順で、Aでも+が付いた方が高い、(2)の点数は100点満点の得点 * (1)(2)は 2000年12月時点、(3)(4)は2001年1月時点
以上のような調査結果は、過去に成績のよかった投資信託が、将来も引き続きよい成績を残すわけではなく、他の投資信託と何ら違いがないということを教えてくれるとともに、将来、よい成績を残してくれる投資信託を選ぶ方法が見つかっていないことを示している。一般の投資家は、過去の投資信託の運用成績をもとにして、将来の成績を推しはかろうとする人が多いのだが、この方法がまるで無意味であるということなのだ。 プロのファンドマネージャーと言われる人たちの中で、過去3年間の成績がよかった人たちがいたとしても、それはたまたま成績がよかっただけで、次の3年間は、平均を下回る成績を残す可能性が5割以上あるのだ。つまり、成績のよかったファンドマネージャーも、コンスタントに市場平均を上回る成績をあげる何らかのノウハウをつかんでいるというわけではないということを示している。この点について、ファンドマネージャーの責任を問うのは酷なのかもしれない。経済環境・金融環境は変化し続けている。たまたま一定の時期によい成績を残せたとしても、次の時期に同じようによい成績を残せるとは限らないということなのであろう。いずれにしても、将来の金融環境の大きな流れを的確に予測しながら、それに基づいた上手な運用を的確に行っている人がほとんどおらず、コンスタントに市場平均を上回る成績をあげるということができていないのだ。 プロと呼ばれる人々の運用成績が市場平均を上回ることができないということであれば、市場に出回っている星の数ほどの投資信託のうちの大部分が、投資家にとって選ぶに値しないことになり、機械的に銘柄を選んで市場平均を忠実に実現してくれるETF(株価指数連動型上場株式投資信託)やインデックスファンドの方が、選ぶに値するということを意味する。投資信託の運営に携わっている人々は、自分たちの投資信託が、銘柄選びに何も頭を使っていないETFよりも低い価値しかないなどといったことは認めたがらないかもしれない。ある時の運用成績が、思ったよりも低かったのは、予想外の事態が勃発したことによるものであるなどと言い訳をするかもしれない。しかし、長年にわたって、ほとんどの投資信託の中長期的な成績が市場平均を上回ることができていないという実績が厳然としてあり、それから判断する限り、正しい選択眼を持って銘柄を選択しているとは言い難く、そのように言われてもしかたがないということになる。 このように、ことごとくの信頼性の高いと考えられる調査結果において、過去の運用成績をもとに将来の成績を推しはかろうとすることがほとんど無意味であるということが示されている。最近になって新たな技術が開発され、過去の実績をもとにして将来の運用成績の予測ができるようになったという話も聞こえてこない。 したがって、投資信託を販売する人々が、過去の成績を引き合いに出して、今後も引き続きよい成績があたかも期待できるかのような印象を与える宣伝をすることはやめるべきであろう。また、新聞や雑誌において、投資信託の選択基準として、過去の運用成績の良し悪しが重要であって、それを投資判断の材料にすべきだといったことを述べることも、投資家に誤解を与えるものであって、不適当と考えられる。
(注) Index Fund
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