賢い人の分散投資−2.1

  

第2章 分散投資に最適な商品

  

1. ETFを利用した分散投資

株式投資信託を選ぶにあたって、毎年1%とか2%といった高めの信託報酬をせっかく払っても、市場平均を上回るような投資信託を見つけられないということから、最初から市場平均を目指したETFを選んだ方がよいという考え方を持つ人が増えつつある。

ETFというのは、株価指数連動型の上場投資信託のことで、ファンドマネージャーが銘柄の選択に頭を使うことなく、市場を構成する銘柄に市場と同じ割合で機械的に投資をする投資信託である。銘柄選択を行なうファンドマネージャーの人件費などがかからないということもあり、毎年払う信託報酬が0.1%前後のものが多く、一般の投資信託と比較すると、かなり安いのが特徴である。

米国では、このように手数料の安いETFを選ぶ人が近年急増し、米国のETFの市場規模が2021年末で950兆円(7.2兆ドル)に達する。一般の投資信託の運用成績が期待したほどではなく、市場平均をさえ上回っていないということに気がつく投資家が増えるにつれて、そのシェアを伸ばし続けている。一方、日本のETFの市場規模は約60兆円であるが、そのうち日銀が保有する分が52兆円であり、実質的な規模は約8兆円に過ぎない。

事実、無差別分散投資をする場合に、通常、最も優れた方法はETFに投資をする方法である。この方法によれば、上場されている株式に網羅的に投資をすることができる。幅広く投資をするという点でこれにまさるものはない。しかも、主要な銘柄に均等に投資をするETFがある一方で、大型株(発行済み株式総数が多く、時価総額の大きな企業の株)には多めに、小型株には少なめに、つまり、株式市場の銘柄の規模を反映した加重平均値を目指すというETFもある。このように、市場の平均的な姿を実現するには、ETFは最適な手段である。

しかも、その運用成績は、一般の投資信託に投資をする場合よりも平均して優れている。プロのファンドマネージャーが銘柄を選ぶ一般の投資信託が、ETFのように、まんべんなく投資をする投資信託よりも、運用成績の点で上回るというわけではなく、手数料を余分に払う分だけ下回る可能性の方が一層高くなる。

一般に、テレビ・新聞・雑誌などに広告が載っているような商品は、商品の売り手が高い広告料を払っても採算に乗るほど、売り手にとって有利な商品だと考えられる。これに対して、ETFは広告が全く行われていないが、投資信託の中でもトップクラスの人気となっているものが多数含まれており、それらは買い手にとって有利な商品であると考えてよいだろう。

  
   
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