賢い人の分散投資−2.13

  

13. 一般の投資信託

投資信託のセミナーを聞いていると、「アセット・アロケーションが大事ですよ」とか、「アセット・アロケーションで資産運用の成績の9割方が決まりますよ」などといった言葉をよく耳にする。アセット・アロケーションというのは資産のクラス別配分のことで、たとえば、日本株に全体の資産のうち30%、外国債券に40%などという具合に、どのようなタイプの資産に、どのような割合で資産配分を行ったのかによって、投資家の運用成績の9割が決まってしまい、日本株の中で、どの個別銘柄を選ぶかといった、銘柄選択の上手下手が運用成績に与える影響は、残りの1割にすぎないというのである。個別銘柄の選択よりも、アセット・アロケーションの方がはるかに重要だと言っているのである。言葉を変えて言うと、プロのファンドマネージャーが苦労して銘柄選びをしてみても、市場平均を上回る成果はあまり期待できないと言っていることになる。

確かに現実の投資信託の運用成績を見ていると、この言葉が当たっているような気がするし、過去の運用成績を統計的に分析した調査結果を見ても、この言葉が当たっているようだ。つまり、現実の投資信託は市場平均を確実に上回るということができていない。そうなのであれば、それが現実なのであれば、そこから出てくる結論として、一般の投資信託を購入する必要はないということになる。それよりも、手数料の安いETFの方がよいに決まっている。

ただし、この言葉を、もしもウォーレン・バフェット氏が聞いたとしたら笑い出すであろう。彼は市場平均を過去半世紀にわたって、毎年17%上回る成績を残してきた。同氏に対して、この言葉に対するコメントを求めたら、恐らく「それは現実の投資信託のファンドマネージャーで銘柄選びを上手にできる人がいかに少ないかを表した言葉だ」と答えるであろう。

銘柄選択を上手に行なうことによって、単純な無差別分散投資よりも高い運用成績を長期間安定的に収めることができるということを、バフェット氏の運用成績が証明している。同じ米国株に投資をしていても、銘柄選びが上手であれば、市場平均を17%上回る成績を50年以上にわたって収めるということが不可能ではないのである。

銘柄選びを上手にできない人は、自分だけではなく他の人も皆できないと考えて、運用成績は運や確率で決まると考える傾向があるが、それは真実なのではなく、その人の分析力次第で、大きな差がつきうるということなのだ。同じように将来のリスクを読み解くことができない人は、自分だけではなく他の人も皆できないと考えて、不幸な事態が起きるかどうかは運や確率でしかわからないと考える傾向があるが、そのようなこともない。たとえば、債券を発行している企業等のリスクを分析することによって、その債券が債務不履行を起こすことが論理的に予測できることがある。いつ起きるのかは判断しがたいとしても、遠からず起きることが予見できるということは少なからずある。

一般の投資信託において、ファンドマネージャーが銘柄選択を上手にしているなら、市場平均を上回る成績が収められているはずだし、また、ファンドマネージャーが資産のクラス別配分比率を適切に見直していたとしても、市場平均を上回る成績が収められているはずなのだが、どうもそうではなさそうだ。資産のクラス別配分比率については、投資信託によってあらかじめ大枠が決まっていることが多いし、多少見直すとしても、株価が上がったところで強気になって、高値で株式を買い増して株式運用比率を少し高め、株価が下がったところで弱気になって、安値で株式を売って株式運用比率を少し下げるといった、タイミングの遅れた対応が見られることが多い。それはともかく、「アセット・アロケーションで資産運用の成績の9割方が決まる」と言う場合には、投資家がどの投資信託を選ぶかによって、運用成績がほとんど決まるのであって、ファンドマネージャーの手腕の良し悪しが左右する部分がごく少ないと言っていることになる。

面白いのは、「アセット・アロケーションが大事ですよ」という言葉を、投資信託の運営会社や販売会社の人たちがよく引用して使っているということだ。この言葉を聞くと、私はこの投資信託の関係者は、上手に銘柄選びができないとみずから正直に言っているのだと思ってしまう。私は「アセット・アロケーション次第で、運用成績の9割方が決まる」と述べている金融機関の投資信託を購入するのは間違っていると思う。彼らはバフェット氏のように銘柄選択を上手に行なうノウハウも自信もないので、銘柄選択に時間とエネルギーを費やしても効果はほとんどないと言っているのだ。プロのファンドマネージャーと呼ばれる人たちに、銘柄を上手に選べる人がほとんどいないということは、過去の運用成績が示しているというだけではなく、本人たちもそれを理解しているということになる。そのように銘柄選択が上手にできないと言っている人々に、大切な自分の資産の運用を任せたいとは思わない。少なくとも販売手数料や信託報酬などに、何%もの手数料を払う価値はない。それよりも、同じようなタイプの資産に投資をしているETFに投資をした方が手数料の分だけ運用成績がよくなるはずだと考える方が、筋が通っている。

  
   
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