賢い人の分散投資−3.1

  

第3章 もう一段上の分散投資

1. 選択的分散投資

分散投資といっても様々な分散投資がある。たとえば、業種を分散する場合に、できるだけ幅広い業種に分散する方法の他に、いくつかの業種だけに絞り込んで分散する方法もある。前者の方法を「無差別分散投資」と呼ぶのに対して、後者の方法を「選択的分散投資」と呼んで区別したい。分散投資において、業種の数が多ければ多いほど運用成績がよいのかというとそんなことはない。

たとえば、ABCDという4つの業種の企業があり、いずれも国際競争力に優れ、今後の業績の伸びも期待できるとする。これに対してPQRという3つの業種の企業が構造不況業種であるとする。この時、前者の4業種の企業のみに投資をした場合と、ABCDPQRの全7業種に投資をした場合とでは、どちらの運用成績がよいであろうか。

将来のことは分からないとは言いながら、恐らく前者4業種の企業のみに投資をした方が、長い目で見て運用成績が優れたものとなる確率が高いであろう。もちろん、3年後に構造不況業種に属するはずのRが、新製品の開発に成功して株価が急伸する可能性もある。しかしその可能性がそんなに高くなく、たとえば3%しかないのであれば、その可能性に賭けるのは有利な判断ではない。10年後になって、その選択が、結果としてベストな運用成績とはならないかもしれないが、判断しなければならない時点では最善の選択をしたと割り切るべきである。

このように比較的優れたものを選ぶ、あるいは少なくとも平均を下回るものをできるだけ外すことができれば運用成績は向上する可能性が高い。構造不況業種であるPQRを構造不況業種だと、すべて見極めることができなかったとしても、たとえば、PQが構造不況業種であることを見分けることができて、これを投資対象から外して、ABCDRに投資をすることができれば、PQを含むABCDPQRに投資をした場合よりも運用成績が優れるであろう。

平均を上回る上手な資産運用をしたいという場合には、よい先を見分ける眼が必要になる。その際のよい先とは、現在相対的によい先という意味ではなく、今後だんだんよくなっていく先という意味である。上手な資産運用をするためには、将来起こりうることを、ある程度の幅をもって予測しながら運用する必要がある。これに対して、将来のことは全く予測できないという人が、やむを得ず選ぶ方法が無差別分散投資なのだ。

  
   
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