賢い人の分散投資−2.3

  

3. ETFの純資産規模

日本株に対する投資意欲が低迷している影響もあり、日本で上場されるETFの種類は増えつつあるものの、個々のETFの規模は、米国を中心とする海外市場におけるETFと比較して、まだまだ小振りなものが多い。

一般に、投資信託の純資産規模が50億円未満などと小さめであるということは、その投資信託に対する投資家の数が少ないということであり、規模の小さい方が流動性(転売可能性)に劣る傾向がある。つまり、売りたい時にすぐに売れず、買いたい時にすぐに買えない可能性があり、また、売買できたとしても、本来の資産価値よりも高い価格で買うこととなったり、低い価格で売ることとなったりせざるを得なくなる可能性がある。また、規模が小さいものでも、大きなものと同じように管理費用がかかる部分が多いため、何年後かにファンドの規模がさらに縮小して、ETFが打ち切りとなり、残った資産を処分して払い戻しが行なわれるという可能性もある。これが繰上げ償還と呼ばれるものである。わが国のETFの歴史はまだ浅いが、それでも、既に上場廃止となり、繰上げ償還されたETFも多数存在する。(注2)

その点、規模の大きいものについては、多数の投資家によって大量の売買が頻繁に行われており(流動性が高く)、ファンドの寿命も長いと考えられるので(持続性にも優れ)、投資する際の安心感が高い。いずれにせよ、国内のETF、海外のETFを問わず、規模の小さいものや、あまり特殊なものを避けて、できるだけ幅広い投資家に受け入れられているETFを選ぶことが望ましい。

アクティブ型の投資信託の場合には、逆に、あまり規模が大きくない方がよいと言われる。たとえば、日本株投資信託の場合、500億円、1,000億円といった規模の大きめな投資信託に組み込まれている株式の銘柄構成をみると、よく名の知れた大型株が並んでおり、ETF やインデックスファンドの銘柄構成とあまり差がなくなる。つまり、資産規模が大きくなると、銘柄構成の特徴がなくなって、市場平均を上回る可能性がほとんどなくなってくるのにもかかわらず、高めの信託報酬を払い続けるので、その分だけ運用成績が市場平均を下回ることになる。

一方、ETFやインデックスファンドの場合には、規模の大きいことは弱点とはならない。もともと、市場平均をそのまま反映させようという投資信託なのだから、規模によって銘柄構成が変化するということはなく、運用成績においても変化を生じることはない。

(注1)ここで出てきた外国ETFは、もともと外国市場で上場されていて、日本でも重複して上場されているETF のことであり、以下の表の中では「外国ETF」と表示した。日本で上場されているとはいえ、全ての証券会社が扱っているわけではなく、一部の証券会社では入手できないことがある。

(注2)近年、上場廃止となったETFとしては、「i シェアーズ新興国債券ETF-JDR(自国通貨建)」など2018年に14本、「ダイワ上場投信−トピックス・コア30」など2019年に21本、「ONE ETF 国内金先物など2020年に2本「MAXIS トピックス・コア30上場投信」など2021年に9本、「NEXT FUNDS 南アフリカ株式指数・FTSE」など2022年に3本などといった例がある。

  
   
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