賢い人の分散投資−2.6

  

6. 海外で上場されているETFで日本で取得可能なもの

ニューヨーク、ロンドン、香港、パリ、ミラノ、フランクフルト、アムステルダム、オーストラリアなどの海外の証券取引所で上場されているETFで、わが国で取得可能なものが約450本ある。その中でも、ニューヨークで上場されているもの(ニューヨーク証券取引所の他、ニューヨーク・アーカ証券取引所、ナスダック証券取引所を含む)は、純資産規模の大きなものが多い。

海外上場ETFの中で、主なものを表に記載したが、日本の証券会社各社で、取り組み姿勢に大きな違いがあるようで、取扱銘柄、手数料水準、最低購入代金などについて、かなりの相違が見られる。取扱銘柄数の多いのは、SBI証券、楽天証券、マネックス証券の3社で、いずれもインターネット取引を中心とする証券会社であり、それぞれ400本弱を扱っている。一般の証券会社の取扱銘柄数は、各社のばらつきが大きいが、大手3社を含めてインターネット証券会社よりも少なめである。

詳細については、各証券会社のホームページで確認できるが、それぞれ取扱銘柄が異なり、手数料水準も異なる。さらには、ホームページ上での探しやすさや資料の充実度も異なる。

ところで、証券会社のホームページを見ると、ETFを投資信託に分類しているところよりも、むしろ株式に分類しているところが多い。これは、投資家にとって非常に分かりにくい。上場された投資信託であることから、取引方法としては株式と同様だと言いたいのだろうが、ETFは株式の一種なのではなく、立派な投資信託であるのにもかかわらず、「投資信託」をクリックしてもETFのサイトにはたどり着けない。まず「株式」をクリックしてから、次のサイトでETFを探し出す必要がある。

ETFを株式の一部に分類するのはわが国特有のことで、証券会社だけでなく、一部の金融情報会社にも同じような例が見られる。しかし、欧米の証券会社などではそのような例は見られず、通常、「株式」、「ETF」、「投資信託」という3通りに分類して、タブを設けている。日本の証券会社各社とも、これにならうことが望ましいと思われる。

海外上場のETFを取得する際の手数料については、通常、海外株式と同様の扱いとなるが、この水準が証券会社各社により、また投資金額により異なる。また、国内のETFの場合よりやや高めとなる。これに加えて、取引通貨が米ドル、香港ドルなどの外貨であることから、円を外貨に交換する為替手数料を要する。この為替手数料も、各証券会社によって異なるが、米ドルの場合で1ドルにつき、大手証券で50銭、インターネット証券で25銭というケースが多い。なお、投資を終えて、投資資金を円に戻す場合には、再度、為替手数料を負担する必要がある。(注1)

保有期間中の年間費用については、表の中で信託報酬を含む年間総経費率として表示したが、この総経費には消費税が加算される。

ところで、海外の証券取引所の取引時間帯が、時差の関係で、日本の証券取引所の取引時間帯とは大きく異なっている。海外で上場されているETFの取引をする際に、コールセンターに電話で取引の依頼する場合や店頭取引の場合であれば、通常の時間帯で問題ないが、インターネットで取引をする場合は、各証券会社の定める取引時間帯に取引をする必要がある。取引時間帯は現地の時間に合わせることから、米国市場のETFであれば日本時間で深夜となる。

  

以下、日本で手に入れられる海外上場の投資信託を、米国株対象のもの、欧州株対象のもの、世界全域または地域の株式対象のもの、複数の新興国株式対象のもの、特定の新興国対象のもの、外国債券対象のもの、商品対象のものに分けて、順に解説していきたい。

なお、具体例として記載したETFは、純資産額80億米ドル(約1兆円相当)以上のもの83本のみとした。(注2) 国内のETFの場合と同様に1,000億円以上とすると、あまりにも多くの銘柄を記載することになるので、基準を高めに変更したものである。

表に記載されたETFの正式名称は、英語などの外国語であり、それを日本語に訳す過程で、証券会社によって呼称が多少異なることがある。一方、ティッカーというのはETF個別のコード番号で、上場されている証券取引所の識別用記号である。これは各社共通に使われているので、間違いを防ぐ意味で役に立つ。ティッカーは、アルファベットや数字を使って表示されている。

  

(注1)外貨の売値と買値との差の半分を、円と外貨との間の、片道の為替手数料と呼ぶ。米ドルのように取引量の多い通貨の場合には、片道の為替手数料は、比率換算で0.30.6%と低めだが、取引量の少ない通貨ほど手数料が高くなる傾向があり、たとえば、香港ドルの場合には1.4%程度のことが多い。

(注2)純資産額は 202212のものである。

  
   
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