賢い人の分散投資−2.6

  

6. 海外で上場されているETFで日本で取得可能なもの

ニューヨーク、ロンドン、香港、パリ、ミラノ、フランクフルト、アムステルダム、オーストラリアなどの海外の証券取引所で上場されているETFで、わが国で取得可能なものが約140本ある。その中でも、ニューヨークで上場されているもの(ニューヨーク証券取引所の他、ニューヨーク・アーカ証券取引所、ナスダック証券取引所を含む)は、純資産規模の大きなものが多い。

海外上場ETFの中で、主なものを表に記載したが、日本の証券会社各社で、取り組み姿勢に大きな違いがあるようで、取扱い銘柄、手数料水準、最低購入代金などについて、かなりの相違が見られる。取扱い銘柄数の多いのは、SBI証券、楽天証券、マネックス証券の3社で、いずれもインターネット取引を中心とする証券会社であり、それぞれ約120本を扱っている。大手証券会社3社は、比較的規模の大きなETFを中心に、20本から40本程度を取り扱っている。(注1)これらの主要各社以外の証券会社では、中国株に力を入れているところで、香港証券取引所上場のETFを扱っているところは見られるものの、国際的に知名度の高い欧米のETFを扱っているところはほとんどない。

詳細については、各証券会社のホームページで確認できるが、それぞれ取り扱い銘柄が異なり、手数料水準も異なる。さらには、ホームページ上での探しやすさや資料の充実度も異なる。

ところで、証券会社のホームページを見ると、ETFを投資信託に分類しているところよりも、むしろ株式に分類しているところの方が圧倒的に多い。これは、投資家にとって非常に分かりにくい。上場された投資信託であることから、取引方法としては株式と同様だと言いたいのかもしれないが、ETFは株式の一種なのではなく、立派な投資信託であるのにもかかわらず、「投資信託」をクリックしてもETFのサイトにはたどり着けない。まず「株式」をクリックしてから、次のサイトでETFを探し出す必要がある。

ETFを株式の一部に分類するのはわが国特有のことで、証券会社だけでなく、一部の金融情報会社にも同じような例が見られる。しかし、欧米の証券会社などではそのような例は見られず、通常、「株式」、「ETF」、「投資信託」という3通りに分類して、タブを設けている。日本の証券会社各社とも、これにならうことが望ましいと思われる。

海外上場のETFを取得する際の手数料については、通常、海外株式と同様の扱いとなるが、この水準が証券会社各社により、また投資金額により大きく異なる。国内のETFの場合よりやや高めで、大手証券会社では、たとえば100万円の投資額に対して15千円(1.5%)程度の水準となり、インターネット証券の場合には数千円程度といったイメージであろうか。これに加えて、取引通貨が米ドル、香港ドルなどの外貨であることから、円を外貨に交換する為替手数料を要する。この為替手数料も、各証券会社によって異なるが、米ドルの場合で1ドルにつき、大手証券で50銭、インターネット証券で25銭というケースが多い。なお、投資を終えて、投資資金を円に戻す場合には、再度、為替手数料を負担する必要がある。(注2)

保有期間中の年間費用については、表の中で信託報酬を含む年間総経費率として表示したが、この総経費には5%の消費税が加算される。さらに、一部の証券会社では、これに加えて口座維持手数料を負担させるところもある。なお、海外株式を対象とした海外ETFの年間経費は、国内の同種のETFの場合よりも、一般にかなり安めである。

ところで、海外の証券取引所の取引時間帯が、時差の関係で、日本の証券取引所の取引時間帯とは大きく異なっている。海外で上場されているETFの取引をする際に、コールセンターに電話で取引の依頼する場合や店頭取引の場合であれば、通常の時間帯で問題ないが、インターネットで取引をする場合は、各証券会社の定める取引時間帯に取引をする必要がある。取引時間帯は現地の時間に合わせることから、米国市場のETFであれば日本時間で深夜となる。

また、大手証券会社の場合には、海外上場ETFを特定口座に入れることができるが、インターネット証券会社の場合には、現状、特定口座に入れることができず、したがって、自分で確定申告をしなければならない(2010年末現在、主要各社とも)。その分、手間がかかる面はあるが、現在の税制では、確定申告時に申告分離課税制度を利用することによって、納税額が不利になるようなことはない。

  

以下、日本で手に入れられる海外上場の投資信託を、米国株対象のもの、欧州株対象のもの、世界全域または地域の株式対象のもの、複数の新興国株式対象のもの、特定の新興国対象のもの、外国債券対象のもの、商品対象のものに分けて、順に解説していきたい。

なお、具体例として記載したETFは、純資産額1,000億円相当以上のもの53本のみとした。(注3) 国内のETFの場合と同様に100億円以上とすると、ほぼすべての銘柄を記載することになるので、基準を高めに変更したものである。したがって、ここに記載されていないETFでも、規模的に安心して売買できるETFが多数あるということに留意したい。

表に記載されたETFの正式名称は、英語などの外国語であり、それを日本語に訳す過程で、証券会社によって呼称が多少異なることがある。一方、ティッカーというのはETF個別のコード番号で、上場されている証券取引所の識別用記号である。これは各社共通に使われているので、間違いを防ぐ意味で役に立つ。ティッカーは、アルファベットと数字を使って表示されている。

  

(注1)2011131日時点で各社のホームページに記載されている海外ETFは、SBI証券123本、楽天証券121本、マネックス証券122本、野村證券43本、大和証券37本、日興コーディアル証券(201041日よりSMBC日興証券)18本である(重複記載分を除く)。海外のETFについては、ホームページを見る限り、大手証券よりもインターネット証券の方が質量とも充実している。

(注2)外貨の売値と買値との差の半分を、円と外貨との間の、片道の為替手数料と呼ぶ。米ドルのように取引量の多い通貨の場合には、片道の為替手数料は、比率換算で0.30.6%と低めだが、取引量の少ない通貨ほど手数料が高くなる傾向があり、たとえば、香港ドルの場合には1.4%程度のことが多い。

(注3)純資産額は、原則として2010131日のものとした。ただし、運用会社によっては、131日のものを公表していないところがあり、その場合には、2010年末など、できるだけそれに近いものを採用した。また、外貨建てのものは、1米ドル82円、1ユーロ112円、1豪ドル82円、1香港ドル10.5円で円に換算した。

(後日注) 本稿執筆後、2014年4月に、消費税率が5%から8%へと引上げられた。

  
   
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