賢い人の分散投資−3.2

  

2. 選択的分散投資の具体例

日本の人口が今後次第に減少するという時代を迎え、内需型産業に属する企業の将来性について懸念する人が少なくない。内需型産業というのは、不動産、建設、外食などといった業種のことであり、国内の需要を主たる対象としているために、将来、売上げが伸びず、限られたパイを奪い合うことになって、収益性も厳しいのではないかと考えられている。

ハーバード大学経営大学院教授で、米国の著名な経営学者であるマイケル・ポーター氏の著書「競争戦略論」(注)に述べられている通り、たとえ衰退する産業に属していても、一定の条件が満たされれば業界のリーダーとして、利益を維持・拡大することは可能である。また、もしも日本におけるノウハウを外国でも生かすことができれば、海外進出を通じて業績を伸ばしていくことも不可能ではないかもしれない。

しかし、内需型産業にあって、業績を大きく伸ばし続けられる企業はごく少ないであろうと考えて、この種の業界に属する企業を投資対象から外すという方法も考えられる。つまり、全業種を投資対象とするETFやインデックスファンドを選ばずに、できるだけ構造不況業種を含まないものを選ぶとか、内需型産業を含まないものを選ぶといった、絞り込みを行なう方法が考えられる。これが選択的分散投資である。

一般に、株式投資で市場平均を上回ったかどうかという評価をする場合には、その国の株式市場を幅広くカバーする代表的な株価指数を基準として利用する。しかし、市場には様々な株価指数、債券指数があり、それらのひとつひとつが市場平均である。その市場平均の中には、より成績のよいもの、悪いものがあるので、より優れた成績の期待できる市場平均を選び、その指数を実現してくれるETFを選べばよいのだ。

  

国際的な分散投資について考えた場合にも、一般的な投資機会のある30ヵ国、あるいは40ヵ国、すべてに投資をするのが無差別分散投資であり、リスクの高い割合には収益性の見込みにくい国々を外して、対象国を半分に減らすとか、さらに3ヵ国とか6ヵ国だけに絞り込んで投資をするのが選択的分散投資である。数ヵ国だけに投資をする場合でも、それらの国の何百という様々な業種の先に投資をする以上、それだけで分散投資が行われている。国の選び方を間違えさえしなければ、その上、さらに何十もの国に分散投資をする必要はない。あまり国の数を増やしすぎると、よい運用成績の期待できる国ばかりではなく、よい運用成績の期待できない国まで含めてしまい、全体の成績を引き下げてしまうことになる。

200911月に、ドバイ政府が債務を返済できなくなり、返済猶予を求めると発表して、大騒ぎとなった。通称、ドバイショックと呼ばれる事件である。しかし思い出してほしい。ドバイショックが起こるまでの数年間は、国際的にドバイへの投資がもてはやされていた。日本でも、テレビ・新聞・雑誌でドバイの急成長が話題となり、ヤシの木の形をした人工島「パーム・アイランド」や世界一高いビル「ブルジュ・ドバイ」(828m、完成後「ブルジュ・ハリファ」に改称)が取り上げられていた。ドバイの高額マンションを購入した国際的な有名人がマスコミで話題となり、ドバイへの投資の機会があれば、一攫千金のチャンスとばかり、飛びつきたいと考えた日本人投資家も大勢もいたことであろう。この当時、無差別分散投資の信者であれば、ドバイへの投資の機会があれば、当然ドバイへの投資を何%か含めて考えたはずだ。

しかし、このようにドバイがもてはやされた状況の中でも、ドバイの成長の持続性に危うさを感じることのできた人は、ドバイへの投資を分散投資に含めなかったはずである。その後、ドバイの資金繰りが行き詰まって債務不履行を起こしたことを考えれば、分散投資の対象として含めた人よりも含めなかった人の方が、分散投資の成績がよくなったことは間違いない。このように、投資対象国を増やし過ぎると、リスクの高い国まで含めてしまう可能性が高くなるのである。

分散投資とはいっても、それを幅広くすればするほど利回りは低下する。投資先の将来性を見分けられる人は、よい先を選んで分散投資をする。将来性を見分けられない人は、何にでも幅広く分散投資をする。そして、幅広く分散投資をすればするほど、得られる利回りは低下するのだ。

資産運用において最も大事なことは分散投資であるとよく言われており、それを信じている人が少なくないと思われるが、残念ながら一般に推奨されているような幅広い分散投資は賢い人のする資産運用方法とは言えない。

  

(注)マイケル E.ポーター著「競争戦略論」1999年、ダイヤモンド社

  
   
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