賢い人の分散投資−3.12

  

12. 日本人バブル

投資対象の中で、誰もが成長性が高いと思っている場合には、既に株価が十分に高くなっている可能性が高く、よい投資対象とは言えないと述べた。投資家の過大な期待が、株価に織り込まれている場合には、特に注意をする必要がある。その典型的なケースがバブルである。これまで様々なバブルが発生し、崩壊していった。投資家はこのようなバブルのさなかに、それがバブルであることに気がついて、バブルの中から逃げ出すには、心の冷静さが必要となる。

日本人が好んで投資をする商品には、多かれ少なかれバブルの影がつきまとう。日本人は他の多くの人が投資をしていると聞くと、バスに乗り遅れまいと考える傾向がある。他の人がもうけている時に、自分がもうけるチャンスを逃すことに我慢ができないのかもしれない。1980年代後半の不動産バブルの時もそうであった。周囲の人が不動産投資をしている中で、自分がその輪から外れたままでじっとしているのには、むしろ勇気が必要である。

一般に、日本の個人投資家に人気が出た商品は、価格がどんどん高値を更新し、その後には、価格の暴落が待っていることが多い。バブル期の土地投機、日本人による欧米不動産投資などの時もそうであったし、個別金融商品についても、同じようなバブル現象がしばしば見られる。しかも、価格のピーク時に、最後の段階で投資するのが、個人投資家や中小団体の資金運用担当者となることが多い。

金融機関が個人投資家に勧める商品は、個人投資家のために、よかれと思って勧めているとは限らない。プロの投資家自身が投資をした後、高値を維持しながら売り抜ける際に、個人投資家が利用されているという場合も少なくないようである。つまり、プロの投資家が価格上昇の旨みをたっぷり吸ったあとで、その燃えカスを個人投資家が食べさせられて、お腹をこわすといったシナリオが、この世界では繰り返し見受けられる。

バブルのさなかに、現在バブルであると認識することは、そんなに簡単なことではないし、そこから上手に逃げだすことも容易なことではない。早めにこの日本人バブルに気付く方法としては、価格が本当に収益性を反映した水準かどうかとか、世界の富裕層が同じような投資をしているかどうかといったことを冷静に考えることが、チェックポイントとなろう。

日本人の投資家は、リスクに対して慎重であるなどと言われるが、この言葉はほとんど信じられない。日本人にとってリスクと感じるのは、本当のリスクなのではなくて、周囲の人たちと違った行動をとることである。他の人と違った行動をとって、ひとりだけ損をすることはリスクである。しかし、皆と同じ行動をとって多少の損をすることは、あまり大きなリスクであるとは感じられない。損をした後に、皆で一緒に傷を舐めあうことだってできるし、あきらめもつく。

不動産バブルの時もそうであったが、日本人の投資行動を最もよく表す言葉は、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言葉であろう。皆が同じ行動をしている時に、自分もその同じ行動をすることには勇気はいらない。しかし、皆と同じ行動をとると、高値づかみとなって、もうける可能性よりも、損をする可能性の方が高くなる。特に、過熱感が強まり、高値のピークが高くなればなるほど、その後には深い谷底が待っている。たくさんの日本人が、同じ投資対象に投資をしたあとの路上には、これまで、重症者から軽傷者に至るまで、たくさんのけが人が散乱しているのを、繰り返し、繰り返し見てきた。

私は日本人の投資動向を、過熱感を測る尺度として利用している。日本人の個人投資家の間で人気が高まってきて、我も我もと投資をする状況になると、価格のピークが近づいており、そのすぐ後で急落が待っている。この繰り返しがあまりにも多いので、このパターンを理解するだけで、損失を回避したり、あるいはその逆の投資行動を取ることで利益を増やしたりするチャンスが得られると考えている。

  
   
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