賢い人の分散投資−3.14

  

14. テーマ型投資信託の不調

テーマ型の投資信託というのがある。たとえば、ITファンド、エコファンド、SRIファンドなどというのがそれであり、IT企業とか、環境問題にかかわっている企業、企業の社会的責任を果たしている企業などといった企業群の株式を集めた投資信託が売り出されている。証券会社や銀行などの金融機関は、新しいテーマを次々と持ち出してきて新商品を勧めてくる。このようなテーマに属する企業は、将来性が高く、高い株価の上昇率が見込まれると考えて作られ、投資家もそれを期待して投資をするのだが、どうも期待されるような成績が残せていない。

エコファンドについては、環境に配慮している企業に投資をするタイプのものから、環境対策に貢献する技術を持った企業に投資をするタイプのものまで幅広いため、一概には述べ難いが、これらの企業の利益が特に平均を上回って伸びているというわけではなさそうだ。設定後10年くらい経過したものの運用成績をみると、市場平均を上回っているものも一部ある一方で、下回っているものもあり、特に運用成績が優れているとは言えない。

IT企業に対する投資熱が高まった時にもそうであったが、ある業界が全体として成長することは間違いないとしても、ほとんど無数ともいえる若手企業家が参戦し、激しい競争が行われる中で、どの企業が生き残り、どの企業が淘汰されるのかが見通せるわけではない。一時的に成長している企業といえども、より新しい技術を持った企業が次々と現れて、競争力を失って失速するかもしれず、明日はどうなるか分からない。たとえ、長期間生き残った企業であっても、利益が増加し続けているかどうかは分からない。

したがって、この種の企業を対象にした投資信託に投資をしても、当たり外れを平均した成績は決してよくない。米国でもIT企業に対する投資熱が高まった時期があったが、当時、IT企業に投資をしない投資家は時代遅れと言われる中で、IT企業に投資をしなかった投資家として、ウォーレン・バフェット氏が有名である。

テーマ型の投資信託に魅力を感じる投資家が多いのは、その業界が大きく成長しそうだという期待感があるからだ。しかし、業界が大きくなることと、その業界に属する個々の企業が成長することとは必ずしも同じではないし、さらに、各企業が成長するといっても、売上げが伸びることと利益が増加していくこととは同じではない。それにもかかわらず、単なる期待感だけで株価が上昇すれば、その後に起こることはいつも同じである。このようにして、投資家の期待感は裏切られることが多い。

しかも、このように、あるテーマが持ち出されると、同種の投資信託が次々と作られ、販売される傾向がある。なかには、大型の投資信託も出てくる。このような場合、投資信託の運用責任者ではなくとも、この種のテーマに合致する株式銘柄を自由に株式市場で買えるのだから、投資信託が新規設定される直前に買っておいて、設定された直後に売れば、値上がり益を得ながら高値で売り抜けることができる。このような投資家が出てくることから、投資信託が新規に設定された時の株式の取得価格が高めとなりがちである。投資信託は高値であっても予定された日には買わなければいけないので、この結果、テーマ型ファンドに投資をしても値上がり益を得られにくくなるわけだ。つまり、値上がり益の旨みを持ち去られてしまう。そんなこともあって、この種の、旬のテーマを扱った投資信託の成績が期待されるような成績を残せなくなるようだ。

このように、世間で注目されている旬のテーマというのは、個別株式投資においても要注意である。すでに一般の投資家にも周知であるということは、株式が買い進められ、株価水準自体が高めとなっていることが多い。金融機関の人々がセールス活動を行なう段階というのは、既にそのテーマが周知となり、価格がほとんどピークに達している時期である可能性があり、金融機関の人々がセールスをしていない分野で、自分でシナリオを考えながら動くことが望ましい。

自分でシナリオを考えるといっても、短期的なテーマではなかなか利益を得にくい。10年くらい先にも利益が伸びていくような持続性のあるポイントに注目して投資をしたい。しかも、できるだけ他の人々の注目を集める前に投資をすることが望ましい。よいものは自分で見つけるべきであって、世間の人々に見つけてもらわない方がよい。

  
   
FP総合研究所
  Copyright 2011 FP Global Research, Inc. All Rights Reserved