賢い人の分散投資−3.16

  

16. 投資の上手度5段階

投資における運用方針が、運用成績の良し悪しに大きな影響を与えるが、運用方針を5通りに分類して、その上手な順に並べると、次のような5段階となろう。

レベル5: 優良個別先選択投資

レベル4: 選択的分散投資

レベル3: 無差別分散投資

レベル2: ものまね投資

レベル1: 一攫千金投資

  

最も上手な分散投資は、レベル5の優良個別先投資である。中長期的な視点から、優れた先を厳選し、その基準を満たす先を、たとえば12先見つけて投資をする。しかし、このような先を見つけることは、それほど簡単ではない。企業の将来性についての分析ばかりではなく、現在の株価水準について、適正かどうかの判断も必要となる。

次のレベル4が、選択的分散投資である。比較的優れた投資対象グループを見つけて投資をする。あるいは、あまり将来性の期待できない投資対象グループや、株価水準が明らかに過大評価されている投資対象グループを外す。まんべんなく投資するのではなく、投資対象をやや絞り込んだ投資を、ETFなどの投資信託を利用して行なう。

5つの段階の真ん中が、レベル3の無差別分散投資(単純分散投資)である。あらゆる投資機会に、できるだけ幅広く分散投資をする。何も考える必要がないので、リスでもできる方法である。その結果として、平均的な運用成績が得られる。他の人よりも優れているわけではないが、他の人よりも劣っているわけでもない、中間の成績である。考えられるあらゆる先に投資をしているので、よい意味で話題になる先にも少しは投資をしていることになるし、悪い意味で話題になる先にも、やはり少しは投資をしていることになる。この無差別分散投資をする場合にも、コストの安いETFを選ぶべきであり、一般の投資信託を利用すると、その運用成績は遅かれ早かれ中間の成績をやや下回ることになる。

平均より少し劣るのが、レベル2のものまね投資である。他の人がよいという投資対象に投資をする。しかし、他の人がよいと言っているということは、他の人々が先に投資をしているということでもある。投資のタイミングが遅れるので、既に値上がりしている先に投資をすることになる。別に他の人に勧められなくとも、他の人々が買って値上がりし始めている銘柄を、自分でめざとく見つけて投資をしたとしても同じことである。個人投資家で、株式市場が極めて好調なのを見て、株式投資信託を始めるとすると、レベル2の仲間入りをする。企業年金などを運用している機関投資家でも、株価が上昇しているのを見て、株式への投資割合を増やし、株価が下落しているのを見て、株式の保有割合を減らす傾向がある。これも同様である。特に、その判断が遅れれば遅れるほどレベル2でも下の方になる。企業年金の運用成績を見ていると、株式の割合を増やした時に減らし、減らした時に増やしていれば、運用成績が随分向上したであろうと思われるケースが、残念ながらあまりにもよく見られる。

最悪なのが、レベル1の一攫千金投資である。合理的な根拠もなく、勘と思い込みだけで投資対象を決めたり、一攫千金を狙って博打的投資をしたりする。株価がただ同然の株式を片っ端から買いあさり、その中のひとつくらい大きく値上がりをするのではないかと考える。あるいは、人から聞いたうわさをもとにして投資をする。しかし、市場に流れているうわさ話の中には意図的に流されているものも多く、大けがのもととなる。

さらに、大儲けのチャンスを探し、いわゆる「うまい話」を聞くと、飛びつきたくなる。「こっそりあなただけに教えますが、これに投資をすれば、5ヵ月で30%のリターンが確実に得られます。急いで投資をしないと、この話は他の人に持って行ってしまいますよ。」などと聞くと信じてしまう。まさか自分は信じないと思っている人でも、いざ自分のところに話が持ち込まれると意外とだまされることがある。あるいは、「この新規公開株に投資をすれば、大幅な値上がり益が得られます。」と聞いて投資をしたところ、株式の公開が行われないままとなり、価値の乏しい未公開株をつかまされる。この種の話は枚挙にいとまなく、次々と新たな手口も登場する。

  

これらの中で、どれが望ましいのかというと、もちろんレベル5の「優良個別先選択投資」がベストではあるのだが、レベル5は誰にでもできるものではない。経験で裏打ちされた財務分析力と事業理解力、そして決して熱くならない冷静さと決断力が必要となる。したがって、一般の人々にとっては、レベル4の「選択的分散投資」がベストと考えられる。レベル4とレベル3、さらにレベル2も含めて、いずれも分散投資の範囲に含まれるのだが、現在、多くの人々は、レベル3の「無差別分散投資」(厳密にはその標準値をやや下回る水準)、または、レベル2の「ものまね投資」の水準にとどまっていると思われる。そこで、できるだけ多くの人々が、少なくとも標準的なレベル3である正しい「無差別分散投資」まで、できればレベル4の「選択的分散投資」までのレベルアップを図るようにして頂きたいと思う。

  
   
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