賢い人の分散投資−3.4

  

4. プロと選択的分散投資

自分で、将来性の高い業種を上手に選んで選択的分散投資をする自信がないということから、よい業種やよい先に投資をえらぶことができるプロ中のプロを探して運用を任せたいという人もいるであろう。そのようなファンドマネージャーが見つかれば、平均を上回る成績が期待できるはずだ。

投資信託を販売する側でも、自分たちの投資信託がETFよりも優れていると言いたいのであれば、通常の市場平均を上回る成績を上げうることを語る必要がある。この場合、過去の3年間などといった、過去の短い期間の成績が優れていたということを述べても、将来を約束するものではないのだから不十分である。一般に、過去3年間の成績が平均を上回っていても、次の3年間に平均を下回る確率が5割以上あるというのが現実である。

過去の実績をセールストークにするなら、たとえば10年とか20年といった実績を提示してほしい。10年、20年といった間には、様々な金融環境の変化があったはずであり、その間の様々な環境下でも安定的に市場平均を上回ったということは、実績として評価できよう。ところが、わが国の投資信託の場合にそのような証明ができるケースはほとんどないのだ。わが国では、10年以上存続している投資信託は、わずか5%に過ぎない。それでも10年以上にわたって、市場平均を毎年平均5%とか10%上回ったといった実績はそれなりに評価しうる。しかし、わが国で10年以上生き残った投資信託といえども、そのように市場平均を大きく上回る実績を残しているものはないようだ。

大部分のファンドマネージャーの中に、どうしてウォーレン・バフェット氏やピーター・リンチ氏のように、市場平均を毎年10%以上上回る運用成績を長期間にわたって残すことのできる人がいないのであろうか。その原因としては、次のようなものが可能性として考えられる。

(1) 短期の値上がり益を期待して銘柄を選ぶので、中長期的な値上がり益が得られない。ファンドマネージャーは短期間の成績次第で仕事を失う可能性があり、5年間といった中長期的な成績よりも、3ヵ月間、6ヵ月といった短期の成績を気にする傾向が強く、投資先の選別基準が正しくない。

(2) 投資先の中長期的な分析能力が不足している。自分で分析して、自分で判断をするのではなく、勤務先や取引先の意向に沿ったアナリストなど、他の人の意見を受け入れる傾向があり、勤務先や取引先の意向が反映される。もちろん、中には優れた志を持ったファンドマネージャーもいるのであろうが、それに見合った実績を残しているケースはまず見当たらない。運用会社にとっては、投資信託に投資をするような小口の投資家は最重要顧客ではないということなのかもしれない。

(3) 投資信託の資産規模が大きくなると、自由な銘柄選択ができにくくなり、どうしても大型の限られた銘柄の比率が高くなる。この結果、ETFと同じような銘柄構成となってしまうのにもかかわらず、高めの信託報酬を取り続けている。

(4) ファンドマネージャーとかトレーダーが、売ったり買ったりした方がよいというタイミングは、実は市場ではそんなに頻繁にあるものではない。しかし、売買を職業としている習性から、じっとして動かない方がよいと分かっている時でも、ついつい売買をしてしまいがちであると、このような人たちが自ら反省の弁をしばしば述べている。余分な売買をすることで、コスト負担が発生し、その分運用成績を下げる。

このように、理由は様々考えられるが、いずれにせよ、プロのファンドマネージャーの中長期的な運用成績が、市場平均をほとんど上回ることができていないという現実がある。

  

プロのファンドマネージャーが、正しい基準で、つまり中長期的によい国の、よい業種の、よい企業を選んでくれれば、単純な市場平均を上回るはずなのだが、実績を見るとどうもそうなってはいないようだ。プロとはいっても、ファンドマネージャーには、中長期的によい先だけを選んだり、あるいはせめて悪い先をはずしてくれたりといったことを、あまり期待してはいけないということなのだろうか。それならば、我々個人投資家が、本当に自分たちの立場に立った投資先選びを、自分たちでできないだろうかということを考えてみたい。

  
   
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