賢い人の分散投資−3.5

  

5. 株式投資でよい先とは何か

投資で最も大事なのはよい先を選ぶことであると述べたが、よい先とはどのような先なのであろうか。

債券投資であれば、元利金を期限までしっかりと払ってくれる先である。つまり、十分な収益力が継続的に期待できる、安定性の高い先となる。それでは、株式投資の場合はどうであろうか。債券投資の場合と株式投資の場合では、よい先は必ずしも同じではない。

株式投資でよい先とは、株価に比べて高い割合の配当が得られる先であろうか。確かに、超低金利時代が続き、預貯金や債券の金利があまりにも低い水準なので、平均でも2%前後、高いものでは510%といった配当利回りが得られる株式投資は魅力的に映る。

しかし、配当は債券の金利などと違って、将来も同レベルの配当が約束されているわけではない。さらに、配当利回り(配当÷株価で計算され、%で表示される)が平均以上に高い株式は、一般に投資家の評価が低く、株価が低迷していることを意味する。その中には掘り出し物もあるかもしれないが、本当に将来性の期待しにくい先も多い。仮に5%の配当を受け取っても、株価が5%値下がりをすれば、たちまち利益は消える。したがって、配当をたくさん受け取れる先がよい先とは必ずしも言えなさそうだ。

株式投資で得られる利益には、配当と株式の値上がり益があるが、うまくいけば配当をはるかに上回る値上がり益が得られるので、主に値上がり益を期待して株式投資をする人が多い。それでは、値上がりをする株式の銘柄はどのような銘柄だろうか。株式投資の場合には成長性が大事であるとよく言われる。 よい先とは成長性の高い先なのだろうか。

ところが、株式投資は難しいもので、誰もが成長性が高いと思っている先は、実はよい先ではない。誰もが成長性が高いと思っている先の場合には、既に株価が十分に高くなっていて、それ以上、ほとんど上昇余地がないということが多い。一般の投資家は、株式投資において、皆揃って成長性の高い先に投資をしたがる傾向がある。しかし、このような先で、一層の値上がり益が得られる可能性は少ない。むしろ、何らかのちょっとしたマイナス材料が出てくると、株価が大きく値を下げる可能性すらある。現在の株価よりも高くならず、値上がり益が期待できないのであれば、投資先としてよい先とは言えない。

これに対して、一般の投資家が期待する以上に、大きく伸びるような先であれば、投資をした後に、株価の上昇が期待できる。たとえば、皆が年5%程度伸びると考えている先について、それ以上の、年8%伸びるとすれば、超過分について値上がり益が期待できる。あるいは、皆が、年2%減少すると考えている先についても、逆に年2%成長してくれれば、その差の分だけ値上がり益が期待できる。

また、現在の株価が、高い成長性を既に織り込んでいるとしても、8年先とか10年先まで高い成長性が続くことを株価が織り込んでいるということは少ない。もしも、現在の株価が、3年先、4年先までの成長性を織り込んでいる場合であっても、ある投資家が、より長く、8年先、10年先まで高い成長性が持続することを、かなり高い確率で見通すことができるなら、この先はよい投資先となるであろう。

つまり、株式投資でよい先とは、一般の投資家が考えているよりも将来の収益性がより大きく伸びる先、あるいは高い収益性が長期間にわたって続く先ということになる。

そして、よい先を見つけるには、現在の株価がどの程度まで将来の利益の伸びを既に織り込んでいるのかということを判断することも必要になる。つまり、現在の株価が、どの程度割高なのか割安なのかということを、冷静に評価する眼が必要になる。

このように、株式投資においてよい先を見つけるということは、決して簡単なことではない。投資家が積極的に投資を行っている過熱した相場においては、よい先はほとんど存在しなくなる。逆に、株式市場に悲観的な空気が漂っていて、投資家が意気消沈している時には、よい先が見つかる可能性が高い。このように。よい先を見つけるためには、一般投資家の投資動向に左右されることなく、熱くもならず、悲観的にもならないクールな精神状態を保つ必要がある。

  
   
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