賢い人の分散投資−3.6

  

6. 急成長企業がよい先とは限らない

それでは、株式投資で重要な視点となる成長性とは何だろうか。成長性の高い先とは、売上げの伸びている先という意味でよいのだろうか。

通常、急成長企業というと売上高の伸びの著しい先のことを指し、成長性は収入、つまり売上げの伸びで測定する。しかし、いかに売上げが伸びていても、利益が伸びないのであれば、株主の取り分は増えない。したがって、利益が伸びていなければ、株価の持続的な伸びは期待できない。株式投資でよい先とは利益が伸びていく先である。

売上げだけに注目していると、だまされることが少なくない。売上げだけが伸びていても、利益が伸びていないという例はたくさんある。ITバブルの時もそうであった。ITが成長産業だと考えて、多数の投資家がIT企業(インターネット関連企業)に投資をした。確かに多くのIT企業の売上げの伸びは著しかった。創業後の先行投資によって、赤字企業がほとんどであったが、売上げがどんどん伸びれば、いずれは利益もついてくるのだろうと投資家は考えていた。しかし、赤字経営が続き、たとえ黒字転換したところでも、期待を大きく下回る利益水準であった。そのうちに、投資家の熱が冷めて見放され、株価は暴落した。

このように、一般の投資家が成長性を判断する場合に、売上げの伸びの大きさが強い印象を与えてしまい、売上げの伸びている企業が成長企業だと勘違いして投資してしまう。しかし、新規参入企業の多い急成長業界や、技術革新が速く多額の投資を要する業界などの場合には、売上げが大きく伸びていても、利益が伸びないということがある。利益が伸びなければ、いずれ投資家に見放される。

株式投資の先としてよい先は、成長性が高いと皆から思われている先ではないと述べた。そこで、一般の投資家が売上げの伸びで成長性を判断する傾向が強いということであれば、売上げの伸びはあまり目立っていないにもかかわらず、利益の伸びが大きいと期待される先は、多分よい先であろう。一方で、売上げの伸びは大きいが、利益の伸びはそれほど期待できないという先は、株式投資では恐らく悪い先となろう。(注)

  

(注)もう少し厳密に言うと、利益とはいっても、1株あたり利益の伸びることが、よい先の条件となる。大型の増資を繰り返し行なって、発行している株式数を増やしている企業の場合、当期利益が増えていても、1株あたり利益が次第に減っているという可能性もある。このような場合には、株式数の増加を上回る速度で利益が増えているかどうかを確認するために、1株あたり利益の増減をチェックする必要がある。

  
   
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