賢い人の分散投資−3.9

  

9. 無差別分散投資から選択的分散投資へのレベルアップ

投資先の良し悪しを見分けるのには、経済や金融についての理解や、バランスのとれた判断力が必要となる。そのようなノウハウを高める努力をせずに資産運用をする人は、運に頼らざるを得ない。

資産運用の成績は結局運次第だと考える人が選ぶのが無差別分散投資という方法である。できるだけ多くの種類のものに投資をしておけば、よい成績を上げてくれるものもあるだろうし、ひどい成績のものが含まれていたとしてもその影響は薄められるであろうという考え方である

しかし、たとえば、競馬の目利きで、馬の毛並みを見ることで、高い確率で勝ち馬を見分けられるという人なら、必要以上に多くの馬券を買うということはしないはずである。同じように、資産運用においても、高めの収益を獲得してくれるような先を絞り込むことができる人なら、必要以上に多くの先に投資をしないであろう。

ある金融商品で5年間運用した場合、年平均 2%と 8%の範囲の運用成績が見込まれるとする。このような場合、中間の期待値が 5%なので、5%±3%と表記することにする。そして、投資信託 A〜E で運用した場合、次のような成績が見込まれるとする。

     A 12%±10%、 B 6%±8%、 C 1%±5%、 D △2%±10%、 E △7%±15%

このような場合、ABCDEのいずれにも同額ずつ幅広い分散投資をした場合には、全体の中間となる期待値が 2%となる。 A〜Eの投資信託の価格が、それぞれ同じ方向に動くのか、独自の動きをするのかにもよるが、分散投資の効果として、ある程度は影響を打ち消し合う効果が期待できるので、運用成績の範囲は、たとえば±6%となる。 この結果、運用成績は 2%±6%、すなわち△4%〜8%が期待できるということになる。

一方、ブレ幅が大きいにもかかわらず運用成績が高いとは言い難いCDEを外して、ABだけで分散投資をした場合の運用成績は、9%±7%、すなわち 2%〜16% といった具合になる。

つまり、ブレ幅が大きいのに高い運用成績が期待できない投資信託を見分けることができれば、単純無差別に運用した場合よりも、高めの運用成績を上げることができるのである。

  

資産運用で一番大事なことが「分散投資」であるというのは悪い冗談である。資産運用で最も大事なのは、神代の昔から「よい投資対象を見つけること」なのである。よい投資対象グループを見つけて、その構成先で分散投資をする。まず始めに分散投資が必要なのではなく、まずよい投資対象を見つけることが必要である。よい投資対象を見つけてから、それらを使って分散投資をするのである。

よい投資対象グループはひとつとは限らない。複数のよい投資対象グループが見つかった場合には、その複数のよい投資対象グループについて分散を図る、これが正しい分散投資である。

たとえ、よい投資対象を見つける自信がないという人でも、悪い投資対象を除くことは、ある程度できるはずである。悪い投資対象をできるだけ除けば、全く除かずに、万遍なく投資をした場合よりも高い水準の市場平均が得られる。悪い投資対象とは、たとえば、構造不況業種の企業群、格付けの低い企業群、経営不振の続く企業群、リスクの高い国々の企業群などである。このような企業群に投資をした場合、その中のごく一部の銘柄については大きく化ける結果となる可能性もなしとはしないが、運用成績を下げる結果となる可能性の方が高い。このような、選択的分散投資は、悪い先を除く過程でリスクを引き下げ、総合的なリターンを引上げる。つまり、無差別分散投資の場合よりも、「ローリスク・ハイリターン」となる。

現在、わが国で一般的に推奨されている分散投資は、幅広く様々な商品に分散して投資をする方法である。つまり無差別分散投資のレベルにとどまっている。しかし、これでは、賢い人も賢くない人も含めた、あらゆる人々の平均的な運用成績しか得られない。平均的な成績しか得られないということは、他の人と同じだけしか資産は増えず、豊かになったという感覚は得られにくい。世間の人よりも、少しでもましな資産運用をしたいと思うなら、無差別分散投資から早く卒業することが大切である。

  

「分散投資」は便利な言葉だ。 金融機関のセールスマンが個人客に金融商品を勧める際に、どんなにリスクが高かったり、将来性の見込めない商品であったりしても、分散投資の一環ということであれば、気軽に勧めることができる。 個人投資家の立場からも、ひとつだけ選ばなければならないとしたら、決して選ばないような種類のものであったとしても、分散投資の一環としてであれば、織り込むことにほとんど抵抗感を感じない。

「分散投資」は魔法の言葉だ。 この言葉のおかげで、どんなに投資先の良し悪しを見極める力のない人でも、他の人の資産運用の手伝いができるようになった。 この言葉のおかげで、個人投資家は投資先について深く考えることなく、気軽に投資ができるようになった。

しかし、「分散投資」が資産運用において重要な戦略となるにつれて、失われた戦略がある。それが、「よい投資先に投資をする」という戦略だ。君子危うきに近寄らずということで、リスクの高い先、素質のない先を避けて、素質の高い先を選んで投資するという戦略である。

この言葉が広く使われるようになる前であれば、本当に望ましい投資対象を見極めるための努力をしなけれならないと思われていたが、今では、分散投資をすることで、誰でも何ら努力をすることなく気軽に資産運用ができるようになった。 この結果、誰でも同じような運用成績を上げることができるようになった。 そして、多くの人が年平均で3%などといった国際標準を大きく下回る低めの運用成績に甘んじるようになった。 これは残念なことである。

  
   
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