賢い人の分散投資−4.10

  

10. 短期の価格変動と長期の価格変動

近い将来、株価が上がるか下がるかといった短期の価格変動は、様々な要因に基づくものであり、事実上、予測困難であると述べた。しかし、予測困難であるとは言っても、この種のブレは一定の範囲内にとどまるのであって、収益性を反映した水準を大きく超えて、ブレ幅が拡大し続けるという性格のものではない。バブルには必ず崩壊が待っているのと同様に、収益性に見合わない高すぎる価格、あるいは低すぎる価格は、何らかのきっかけで修正される。

一方、長期的な価格変動は、収益性の変化などの合理的な理由に基づいて変化するものであり、待っていれば、いつか再び元の価格に戻るという性格のものではない。一定の範囲内でぶれるのではなく、その範囲を超えて上昇または下落する。その意味では恐ろしい変化なのだが、短期的なブレの部分については予測しがたいのに対して、長期的なトレンドについては、ある程度まで予測が可能である。将来的な方向感について予測ができている場合には恐ろしいことはない。

為替についても同様である。為替も様々な要因で変動しており、日々の短期的な動きは予測しがたい。新聞などには、昨日の変動の理由が明快に書いてある。たとえば、「昨日、米国の雇用統計の発表があり、予想よりも10%悪い数字であったので、ドルが円に対して大幅に下がった。」などといった具合だ。確かに、この種の後付けの理由は、ひょっとしたら原因のひとつなのかもしれないが、それだけで納得できるようなものではない。そのような単純な理由に基づくものならば、3時間後、6時間後の為替の予測も可能となるのではないかと思われるが、明日の為替の予測ができたという話は聞こえてこない。

これに対して、長期的なトレンドとしての為替変動は、国の相対的な経済力、国際収支、財政状況、金融政策、政治動向などを反映している。したがって、短期的な為替変動の場合と異なり、一定の幅をもってであれば、予測が可能である。一般に、物価上昇を抑制しつつ、国の経済が拡大すれば、また、国際収支が改善すれば、為替は強くなるはずであるなどといった観点から、方向感を理解することができる。

  
   
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