賢い人の分散投資−4.4

  

4. 低格付け先の株式で大もうけ

日本航空は20101月に会社更生法の適用を申請し、その後、100%の減資が行われた。つまり、最後まで株式を持ち続けていた株主は、すべての投資資金を失った。その前の年、2009年当時を思い出してみると、日本航空の株価がどんどん下がっていく中で、これは大もうけのチャンスと考えて、多額の株式を新たに買った人が、身の回りにも意外とたくさん見られた。20099月の段階では、格付機関の格付けはダブルBであった。ダブルBの下にも何段階かの格付けがあり、ダブルBは最低レベルではなく、どちらかというと中間くらいの段階の格付けである。しかし、このダブルBの先の株式は、結局、無価値となった。

統計的に見てみると、ダブルBの格付けの債券が5年以内に債務不履行を起こす確率は10%程度で、10年以内に債務不履行を起こす確率は20%程度である。悲観的な見方をする人と楽観的な見方をする人とで、この数字を多いと考えるか、少ないと考えるかが分かれるかもしれない。ただ、もう一段上のトリプルBであれば、5年以内に債務不履行を起こす確率が2%弱、10年以内に債務不履行を起こす確率が3%程度なのだから、トリプルBとダブルBとでは大きな差があることが分かる。だから、トリプルB以上の格付けを「投資適格」と呼び、一般の投資家が投資をしてもよいレベルとするのに対して、ダブルB以下の格付けを「投機的格付け」と呼び、一般の投資家は手を出さない方がよいとされているのである。

元本を失う可能性が、たとえば10%あるのであれば、その逆に、株価が大幅上昇して、投資資金を大きく増やすチャンスが、少なくとも同程度はなければならないのだが、その可能性はそんなに高くはない。ある企業の社債の格付けがダブルB以下の投機的格付けを得ている場合には、その格付け企業の株式は買わない方が無難である。ひょっとしたら、5年後には株価が値上がりをして大もうけするという可能性が全くないとは言わないが、その可能性よりも投資資金の全部または一部を失う可能性の方が高い。

一般に、格付けの低い企業は、必要な資金を思うように調達することができず、たとえ調達できたとしても、格付けの高い企業よりも高めの借入コストを負担する必要がある。だから、格付けの低い企業は、ハンディを背負いながら、格付けのより高い企業と競争する必要がある。さらに、資金調達コストが高くなるとはいっても、調達できるうちはまだよい。ダブルB以下の格付けの企業の場合、社債の発行が難しくなり、銀行借入も思うようにできなくなる可能性が高い。他の条件が同じなら、格付けの高い企業はさらに利益を増やすのに対して、格付けの低い企業は利益を増やせない。したがって、格付けの低い企業に株式投資をした場合、もうかる可能性もあるかもしれないが、それよりも損をする可能性の方が高い。

過去の統計データをもとにして、この点の確認作業を試みよう。

たとえば、格付けが投資適格をやや下回るダブルBの先の株式を持っていたとする。5年後にも格付けがダブルBのままであれば、株価も大きくは変わらないと考えられる。一方、5年以内に倒産していたり、倒産してなくとも格下げになったりしていれば、株価は下がっていると考えられる。逆に5年後に格上げになっていれば株価は上昇していると考えられる。

格付けの変動状況については、大手格付機関の場合、あるレベルの格付けをした先が、3年後とか5年後とかにどのような格付けとなっているかという推移を追跡調査した「格付遷移率表」を発表している。それによると、ダブルBの先が5年後にトリプルBに格上げとなるケースは確かにあるが、もう一段上のシングルAになっている可能性はごく少ない。一方、ダブルBの先が、シングルBまたはそれ以下に格下げとなっているか、あるいは倒産している可能性はかなりある。

長期間にわたって両者の比較を行なうと、ダブルBの先が格上げになる確率よりも、格下げか倒産となる確率の方が高い。この結果、多少の値上がり益と配当を得られる可能性よりも、元本の一部または全部を失う可能性の方が高いものと考えられる。

このように、信用リスクが高いとされている先については、特別な分析力を持った投資家以外は手を出さない方がよい。一般の投資家は、債券投資において投資適格の格付けのものを選ぶのと同様に、株式投資においても、少なくとも投資適格の格付けを得ている先を選んだ方がよい。

  

  
   
FP総合研究所
  Copyright 2011 FP Global Research, Inc. All Rights Reserved