賢い人の分散投資−4.5

  

5. 株式投資と企業の質

株式投資信託で、財務体力の弱い先を外して投資をしたいと思っても、そのような基準で投資先を絞り込んでいる投資信託が、ほとんど存在していない。

債券投資の場合であれば、格付けを見ながら投資先を絞り込むことができる。トリプルB以上の格付けを得ている債券は投資適格であるとされ、一般の投資家が投資をするのに適したものであるとされる。

公社債投資信託の場合にも、この債券の格付けを利用して投資先を絞り込んでいるものがある。あるものは、トリプルAからトリプルBまでの投資適格の債券に幅広く投資をするという方針の説明があり、また、あるものは、トリプルAまたはダブルAという信用度のかなり高い債券にだけ投資をするといった方針の説明がある。それによって、投資対象の質の高さ、つまり投資対象の将来的な信頼性を判断することができる。そうした分類の中から、自分に適した投資信託を選ぶことができる。

ところが、株式投資信託の場合には、投資先の質の高さについての基準がほとんど示されない。好配当株式ファンド、成長株ファンド、低位株ファンド、社会貢献ファンド、小型株ファンドといった名前の投資信託はあるので、過去の配当実績、株価の高低、時価総額の大小、テーマや業種などといった選別基準は示されているが、投資先の財務内容のよさといったものはない。これらのファンド名をみると、過去の実績に基づいて、将来的な期待を抱かせる名前のものが多いが、これらは、投資先企業の質の高さについての基準とは言えない。新興市場において、成長性ばかりに注目して、財務体力についての上場基準を甘くしたところ、上場後すぐに倒産するような企業が相次ぐ事態となった。これと同じことが投資信託の投資対象に起こりうるのにもかかわらず、それに対する防御策が講じられていない。

このように、株式投資信託については、債券の格付けのように、財務内容について一定の基準を満たしているといった投資先の質についての基準がないので、現状では、残念ながら、ほとんど期待だけに基づいて選ばなければならない。

  
   
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