賢い人の分散投資−5.10

  

10. 選択的国際分散投資ポートフォリオ

2章で主なETFについて解説をした際に、ETFの組み合わせによる無差別分散投資のポートフォリオについて検討してみた。それと同じように、国際分散投資を選択的に行なう場合のポートフォリオについて検討してみたい。

今日の日本では、多くの個人投資家の間で、新興国向け株式投資が行なわれている。この種の株式は、日本の株式よりも値上がりが期待できるものと思われていて、多数の投資信託に組み込まれており、あまり意識していない人でも、新興国向け投資を行なっているケースが多い。

このように、数年来、新興国の多くの株式市場では、国内外の投資家からの潤沢な投資資金の流入が続いている。しかし、第3章でも見たとおり、これらの市場の平均株価水準は2007年頃をピークとして、それ以降伸び悩んでいる。また、このような新興国のGDPは伸びていても、上場企業の1株あたり利益が伸びていないケースが多いようだ。したがって、今後も株価が本当に伸びるのかどうか疑わしい面が強い。株価が上昇する可能性がないとは言わないが、逆に何らかのきっかけで大きく下落する可能性はかなりある。

このような状況を踏まえ、また、新興国については、様々なリスクがこれまでもあったことを考えあわせて、これらの国々を外したポートフォリオを考えてみたい。

今日の日本では、新興国の株式に投資をすることが当たり前のように考えられていることから、新興国をポートフォリオに組み込むことよりも、外すことの方に勇気がいる状況となっている。そこで、勇気を持って、新興国を外したポートフォリオを作ってみよう。

  

2章で取上げたようなETFを組み合わせて、新興国を外した選択的国際分散投資が簡単にできる。たとえば、次の3つのETFを組み合わせることで、株式50%、債券50%という比率の分散投資が可能となる。

(1)「インベスコ MSCI ワールド UCITS ETF」(米国66%、日本7%、英国4%、フランス3%、カナダ3%など、世界の先進国23ヵ国)などの『MSCI ワールドに連動するETF - - - - 50

(2)NEXT FUNDS 外国債券 FTSE 世界国債インデックス(除く日本)連動型上場投信(各国国債のおおよそのシェア、米国52%、イタリア8%、フランス8%、スペイン6%、ドイツ5%他)などの『世界国債インデックス(除く日本)』に連動するETF  - - - - - - - - - - 50

  

もう少し多くのETFを組み合わせれば、自分の好みの配分比率で、先進国に分散投資をすることが可能になる。たとえば、日本株20%、外国株50%、日本債券2%、外国債券28%というポートフォリオを作りたいというのであれば、次のようなETFを組み合わせることによって、希望に近いものができあがる。

(1)TOPIX連動型上場投資信託」、「(NEXT FUNDS)上場インデックスファンドTOPIX」、「ダイワ上場投信−トピックス」などの『東証株価指数(TOPIX)』に連動するETF - - 20

(2) 「バンガード S&P 500 ETF (VOO)」、「i シェアーズ・コア S&P 500 ETF (IVV)」、「SPDR S&P 500 ETF (SPY)」などの『S&P 500種株価指数』に連動するETF - - - - - - 30

(3)「バンガード・ヨーロピアンETF」などの『MSCIヨーロッパ指数』に連動するETF - - 20

(4)NEXT FUNDS 外国債券 FTSE 世界国債インデックス(除く日本)連動型上場投信(各国国債のおおよそのシェア、米国52%、イタリア8%、フランス8%、スペイン6%、ドイツ5%他)などの『世界国債インデックス(除く日本)』に連動するETF  - - - - - - - - - - - 28

(5)「i シェアーズ コア日本国債ETF」などの『FTSE日本国債インデックス』に連動するETF       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 2%

  

人によっては、もう少し絞り込みたいと考える人もいるかもしれない。たとえば、先進国の中でも、日本株にはあまり上昇の期待が持てないと考える。さらに、欧州諸国の株式にもそれほど大きな期待が持てないと考える。このような消去法の結果、米国株しか残らなかったという人の場合は、米国株だけで分散投資をすればよい。

米国一国だけということだと、集中的な投資という印象を与えるかもしれないが、米国の株式市場は、時価総額という点で、世界の株式市場の44%(2022年9月末)を占めていて、グローバルな活動をしている企業が多いので、これもまた立派な選択的分散投資である。

  
   
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