賢い人の分散投資−5.6

  

6. 市場を選ぶ

カントリーリスクには、あまりにも様々なものがあるので、ここでそれらのすべてを個別に列挙しつつ解説することは、ここでは控えるが、国際分散投資にあたっては、少なくとも次のような3つのポイントに注意をして選別し、条件を満たしたと考えられる市場を選んで投資をすべきである。

  

(1)株主が株主として尊重される国

株式投資をするのだから、市場経済の制度が整備されていて、自由市場経済の精神が尊重されていて、そして、株主が株主として尊重される国でなければならない。冷静に考えてみると、BRICs 諸国のうち半数の国は、自由市場経済が十分に機能しているとは言い難いにもかかわらず、そのような国の株式に投資をしようという点にそもそもの不安がある。国の方針と株主の利害が一致しない場合、簡単に株主の権利が損なわれる可能性がある。たとえば、中国の上場企業の多くは旧国営企業だが、その経営者は、政府によって選任されている。彼らが、政府の意向よりも株主の意向を尊重した経営をするということは期待できない。

また、BRICs 諸国のように、大量の資金が集まっている市場においては、経営陣に甘えが生じて、株主を大切だと思わなくなる可能性もある。株主のために、十分な配当資金を確保しなければならないとか、さらに利益を増やして株価の引き上げを図らなければならないといったマインドを失ってしまうのだ。経営者が、経営者としての努力を怠った場合に、株主総会で厳しい追求を受けて、辞めざるを得なくなるといったプレッシャーを感じる必要がない。その結果、株主のために獲得されるはずの利益が、様々な名目の費用として流出してしまう。無駄な出費があれば、投資資金に見合っただけの利益の伸びは期待できない。利益が増えなければ、株価の中長期的な上昇は期待できない。

したがって、株主の利益を尊重して、その増大のために不断の努力をするマインドのないような国の企業への投資は見合わせた方がよい。

  

(2)会計制度の整備されている国

会計制度が整備されていない国では、企業の決算数字が信頼できない。決算が信頼できなければ、現在、本当に利益を出しているのかどうかさえも分からないし、まして、将来の利益が増えていくのかどうかといった予測さえもできない。利益が伸びていくのでなければ、株価は一時的に高騰したとしても、いずれ調整局面を迎えることになる。

さらに、親会社と子会社との間で利益の付け替えが行われる可能性もある。日本でも、子会社を使った利益隠しや、損失飛ばしが盛んに行なわれた時期がある。子会社を使って利益を隠すだけなら、いずれまた出てくる可能性もあろうが、そのまま誰かの懐に入る場合には、取り返しがつかない。本来、株主が受取るべき利益が、穴の開いたバケツから水が漏れるように、消えていく可能性がある。

また、社会的に広くわいろが横行している国も避けるべきである。世界の国々の中で、多額のわいろがやり取りされている国が、実は多い。収入のわずか1%のわいろであったとしても、投資家に与える影響は大きい。企業規模、業種、時期によって企業の平均的な利益水準は異なるが、収入の1%とか、3%とか、5%といった割合が、企業の最終的な利益水準であることが多いので、そのうちの1%でも無駄遣いされるとしたら、投資家の利益が大きく損なわれることになる。

このように、会計制度が整備されていない国や、わいろが横行している国についても、投資を行なうことは慎んだ方がよい。

  

(3)法制度の整備されている国

投資家を保護する法律や制度が整備されていなければ、株主や債券投資家の権利は守られない。投資家の利益に反することが行なわれても、それを止める方法がない。訴訟に持ち込んだとしても、外国人投資家に有利な判決が出ることは期待できない。業績が順調な時にはトラブルも少ないかもしれないが、いったん不調になるとトラブルが多発しかねない。

法律が、頻繁に大きく変更される国も問題が多い。政権の交代に伴って、大幅に法制度が変わるということもある。政権の交代がなかったとしても、国内資金が不足している時には、外国人投資家に有利な法制度とし、国内資金が豊かになると、外国人投資家に不利な法制度に変更されるようなこともあり、その場合には、投資利回りを著しく悪化させる。

近年、ブラジルが海外からの投資資金を抑制するために、次々と課税強化策を打ち出している。新たな税制は、主として新規の投資資金に適用されるものであり、既に行なわれた投資資金に対して課税される可能性は少ないものの、この種の突然の変更によって、資金の流入が流出に転じれば、株価や通貨が値下がりして、既存の株主も影響を受ける。この種の投資資金には、投機性が高く、逃げ足の速い資金が多いことから、下落が加速する可能性もある。

この種の規制強化は、ブラジルだけの話ではない。中国もまた、海外からの投機資金の流入規制を強化しつつある。韓国や台湾も資本流入規制を打ち出している。、また、資金流入に伴ってインフレが起きて、厳しい金融引き締め策に転じることとなる可能性もある。このような投資資金の流れを大きく変えるような政策の変更は、株式市場におけるバブルを抑制したり、自国通貨が過大評価されることを抑制したりするために、やむをえない措置なのかもしれないが、株式市場や為替市場における資金の流れが突然変わりうるので、投資家に与える影響は無視できない。したがって、このような大幅な政策変更が行なわれる可能性が多分にあるような国への投資は避けることが望ましい。

  

以上、(1)(2)(3)のような条件をすべて満たす国はそんなに多くはないかもしれない。しかし、その限られた国で国際分散投資を考えるべきである。国の数をそれ以上増やすと、ハイリスク・ローリターンとなる可能性が高い。

  
   
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