賢い人の分散投資−5.8

  

8. 高金利通貨と為替リスク

日本の個人投資家で、高金利通貨に興味を持つ人が少なくない。高金利通貨建ての外貨預金をする人も多いし、また、高金利通貨建ての外債の広告を目にする機会も増えている。さらには、「FX」と呼ばれる外国為替証拠金取引で、高金利通貨の取引をする人も増加している。通貨としては、ブラジル・レアル、南ア・ラント、ロシア・ルーブル、トルコ・リラ、メキシコ・ペソ、インドネシア・ルピアなど、様々だ。

日本では20013月に量的金融緩和政策が採用されて以降、一時的にそれが解除された時期もあったが、今日に至るまで、国際的にも例のないような極端な低金利が長い間続いてきた。こうした中で、外国の高金利通貨が魅力的に思われて、外貨預金や外債、さらに外債を組み込んだ投資信託などで運用をする人が増えている。

しかし、このような高金利通貨に興味を持つのは、一般に、個人投資家というよりも、国際的な投機資金である。金利が国際標準よりも高い国では、インフレが激しいとか、国内の資金が不足しているといった、あまり好ましくないことが起きている可能性が高い。したがって、投機的な資金が集まる時期には為替が強くなる一方、足の速い投機資金が、あるきっかけで逃げ出すと、為替が大きく下落する可能性がある。

投機資金がなぜこの種の通貨を好むのかと言うと、為替の変動幅が大きく、もうけるチャンスがあるからである。しかも、国際的な通貨の取引量が主要通貨よりも少ないことから、投機資金を大量に動かせば、さらに変動幅を大きくすることも可能である。投機資金にとって、価格が動かないのが一番つらく、上昇や下落の幅が大きければ大きいほど、もうけるチャンスが増加する。

もうけるチャンスがあるということは、同時に、損をする可能性もあるということでもある。短期的な金融取引はゼロサムゲームなので、もうける人がいれば、必ず損をする人がいる。特に、大きな資金量を持ち、市場価格を左右できるような投機資金がもうける時には、個人投資家が損をする可能性が高まる。したがって、この種の通貨で運用した場合には、運が悪ければ、投資元本の4割、5割を失うようなことが十分起こり得る。

これらの通貨の為替相場(対円、月中平均値)の過去1020年間の推移は次の通りである。

ブラジル・レアル対円為替相場推移
 
南ア・ラント対円為替相場推移 (注) 
 
ロシア・ルーブル対円為替相場推移
 
トルコ・リラ対円為替相場推移
 
メキシコ・ペソ対円為替相場推移
 
インドネシア・ルピア対円為替相場推移

  

これらの通貨の為替相場は上下動を繰り返しながらも、トレンドとして右下がりとなっていることが見てとれる。これが弱い通貨の特徴であり、このような通貨建ての投資をしていると、長い目でみて為替差損が生じる。したがって、多少高めの金利収入があったとしても、元本の減少額の方がむしろ多く、資産が目減りをするということが起こりがちである。

つまり、短期の為替リスクは行ったり来たりしている回復可能なタイプのリスクなのだが、高金利通貨の長期の為替リスクは回復困難なタイプのリスクなのである。このように、金利の高い通貨で運用をしていると、一時的にはもうかったような気分になるが、長期的には為替差損によって採算にのらない。したがって、まっとうな資産運用においては、この種の通貨を選ぶことは適当だとは思われない。

長期的に弱い通貨であっても、一時的に強くなることがあるので、ちょうどその強くなった時に売ればよいと考えるかもしれないが、短期間のブレ幅が大きめで、かつ予想も難しいため、適切なタイミングで売買することは不可能に近い。

しかも、短期間で売ったり買ったりしていると、為替手数料の負担が発生する。この種の通貨の為替手数料は、主要通貨と比較して、かなり高めなので、短期間で売買を繰り返すと、その負担が一層重くのしかかる。

高金利通貨を避けた方がよいというという場合、単に債券投資の場合のみを想定しているわけではない。一般に高金利通貨は国際的にマイナーな通貨であり、このような通貨を発行する国で株式投資をする場合も同じことである。現地通貨では、株価が上昇して利益が出ているように見えても、為替換算後の円の手取りではむしろ減っているということが起こりうる。為替リスクの認識される国には、債券投資ばかりではなく、株式投資も行なわない方が賢明である。

(注) 南アの通貨は、現地などではラントと発音するが、わが国ではランドと表記されることが多い。

  

  
   
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